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2011/08/09

銃社会アメリカに渡る


実は、私はまもなくアメリカに向けて旅立つ。

アメリカの歴史上、様々な社会運動の中心地だったカリフォルニアに住む姉夫婦の元で療養生活を送るためだ。何の療養なのか、そのことにはここでは触れないことにする。

自他ともに認める「異邦人」である私にとって、アメリカは、いわば「アナザースカイ」。
第二の故郷である。

しかしアメリカを愛してやまない私にとって、無視できないアメリカの病巣がある。
それが医療の現状であり、銃社会の現状である。

最近、シッコ」「ボウリング・フォー・コロンバインなど、マイケル・ムーア監督の作品や、「ガープの世界」「ミルク」など、アメリカの活動家たちの生涯を描いた映画を立て続けにてみている。とくに「ミルク」は、これから行くサンフランシスコの街が舞台で、近年全米で第2番目にゲイの結婚を認めたカリフォルニア州で、まだゲイの権利が認められていなかった70年代に、命を賭して米史上初めてゲイで公職についた活動家の自伝的作品だった。

これら全作品に共通するのが、時代を越えて存在するアメリカの銃社会の病巣だ。

実はつい今しがた、「ガープの世界」を見終わったのだが、その衝撃のラストに私はしばらく今までにないほど強い鳥肌が立つのを感じた。そしてそれは持続した。感動の鳥肌ではなく、嫌悪によって精神が圧倒される感覚の鳥肌だった。映画の中の世界・出来事だと理解しつつも、それを制作者に想像させてしまう、「おきまりのパターン」にしてしまう思考の安易さに恐怖したのだ。つまり、主人公が活動家など違う主義・主張・思想の持ち主に殺されるエンディングは、身近に感じやすいという病巣だ。つまりそれって、現実感があるってことではないか!

自由の世界アメリカでは、多くの活動家や、思想家、政治家が、志半ばで文字通り「凶弾」によって倒れてきた。そしてその凶弾は、常に、一般の市民の持つ銃から発射されてきた。市民に銃を持つ権利が認められているためだ。そしてこの権利は、権力者によって悪用され、市民は権力者の目的を果たすための道具に成り下がった。

1994年、コロンバイン高校での忌まわしい銃乱射事件の直後、全米ライフル協会(NRA)会長のチャールストン・ヘストンは、そのコロンバインの地で集会を開いたという。このことについて、マイケル・ムーア監督が映画の中で問いかける。「なぜ、集会を開いたのか。あのような事件の後にそのようなことを行って、無神経だったとは思わないのか」と。

ヘストン会長は最後まで言葉を濁し、明言を避けたが、勢いでつい本音を漏らしてしまった。


銃を持つ権利を否定されないためだ」と。



ムーア監督のインタビューに答えるヘストン会長(英語のみ)

正直、狂ってるとしか思えなかった。ヘストン会長が、ではない。
ヘストン会長のような考え方を肯定することを許容するアメリカ社会がだ。

アメリカには、ひじょうに多様な価値観が息づいている。人種のるつぼともいわれ、まさに世界の縮図というくらい多くの人種が入り交じっている。全盛期のローマのようである。

ところが「るつぼ」というのは大いなる錯覚で、実際は交わらないミックスサラダ」というような形容が正しい。言ってみれば、大きなサラダボウルに、それぞれのテイストのサラダがきっちりテリトリーを決めあって区分けされて存在しているのだ。るつぼなんて、とんでもない(実際、その“区分け”具合をアメリカの大学で体験した)。



マイケル・ムーアの描く「3分で分かるアメリカの歴史」 (英語のみ)

銃社会そのものではなく、このテリトリー争いの実像を描いた作品もある。ずいぶん前にレビューを書いたことがあった(といっても五行歌だが)が、いまだに記憶に残っている。「フリーダムライターズ」という作品だ。自由のただ乗り論、フリーダム「ライダー」ではなく「ライター」である。

この作品の中では、ある公立高校の実在の教師が、どうやってテリトリー争いに明け暮れる生徒たちに本音を描かせ、それを求心力として異なる人種からなる生徒たちをまとめたかが描かれている。そこから見えるのは、単に銃社会アメリカという姿ではなく、異なるものを許容しない」閉息社会アメリカの姿、病巣だった。

保守対リベラル、公民権運動対白人至上主義、同性愛者の権利主張対排斥主義、女性の権利向上対女性蔑視、キリスト教原理主義者対一般のキリスト教徒または他宗教の信者。

うした主義主張の違いを認めず真っ向から対立する病巣。

そして、ヒスパニック系、アジア系、イタリア系、黒人、白人などが互いにテリトリーをめぐって争い続ける病巣。

銃社会というのは、実はこれらの争いをより醜くしているに過ぎない。銃の所持が問題なのではなく、自分の権利行使のために、他人の権利を無視して、銃を使用してそれを実現しようとすることが問題なのだ。そしてその風潮を疑問視せず、未だに全米で銃の使用禁止を実行できない政府の問題なのだ

合衆国憲法において認められる、right to bear arms という武器保有の権利は、自分の主義主張を突き通すために認められる権利なのだろうか。あるいは、他人の主義主張を排するために認められる権利なのだろうか。あるいは、自己や愛する者のみを守るために認められる権利なのだろうか。そのために、予防的に殺人を犯したり、疑心暗鬼から殺してしまうことが、正当な権利として認められているのだろうか。

もちろん、予防的であれ、疑心暗鬼にかられたものであれ、殺人は犯罪。犯罪が裁かれないという訳ではない。ちゃんと各州法に基づいて法の裁きは行われれる。そこに問題はない。問題なのは、犯罪を行使できる武器の保有を、憲法上の権利として認めていることだ。

アメリカの凄いところは、こうした正当な権利として疑義のある権利であっても、憲法上の権利として死守してきたところだ。本当に凄まじい国だ。

もちろん、連邦制なので州によって憲法の適用範囲が異なり、銃保持を認めない州もある。だが基本、憲法上の権利として尊重する念が先にあり、それに対して制限を設けるという形で、各州では武器管理を行っている(もはや、単に「銃」とはいわない)。

マイケル・ムーア監督も作中で述べていたが、アメリカは寛容な社会ではない。それは、単に自由には責任が伴うという正論の意味ではない。「アメリカ的でない」異なる価値観、主義、主張に非寛容的な社会なのである。

では「アメリカ的である」とはどういうことなのか。
このことを、アメリカ社会はずっと暗中模索している。

まるで思春期の少年のように。

まだ自愛と他愛の境界線のわからない思春期の少年に、自己を愛せ、他人を自己のように愛せと社会に教えられても、その通りに実行はできないだろう。アメリカの病巣はまさにそこにある。自分の愛し方も、他人の愛し方も、自分の尊重の仕方も、他人の尊重の仕方もわからないうちに、「正しいあり方」を植え付けられ、洗脳され、「自己」を失い、周囲の価値観に埋没し、排他的になる。そしてその排他性は、武器を得たことにより凶暴化、凶悪化する。

アメリカほどあけっぴろげに、歴史上の人物が暗殺されてきた国はない。
よく言われることだ。しかしそれはなぜなのか。

なぜアメリカでは未だに、暗殺が横行するのか。なぜ、堕胎クリニックが手投げ爆弾による襲撃を受けるのか(在学中実際に起きた)、なぜユダヤ人を悪く言いうと社会的制裁を受けるのか(なぜニューヨークでこれがタブーなのか)、なぜゲイは肩身の狭い思いをし続けなければらないのか、なぜ黒人が高い社会的地位を得ると、それが実力によるものだと思われないのか、なぜ黒人に高い地位を与えることがその人間の公民権意識の高さを表すいびつなバロメーターになるのか(なぜその程度のことで賞賛されるのか)。なぜ仕事を他人種に奪われることが純粋に自分の能力・実績に起因することだと素直に思えないのか。

なぜ他を憎悪するのか。できるのか。
なぜ殺したいほどに人を憎悪するのか。できるのか。

現地でしっかり見つめてこようと思う。
生身のアメリカの姿を。

2011/05/04

憲法記念日に届いた平和活動家タネモリタカシさんの言葉

2011年5月3日 憲法記念日

広島原爆の被爆者で、アメリカに渡った平和活動家タネモリタカシさんから憲法記念日の今日、メールが届く。メールには、「私の敵は何か」というタイトルで、昨夜遅くに眠れずに書き上げたというタネモリさんの気持ちが綴られていた。それを、静かにタクシーの中で読んでいる。

いま突然激しくなり始めた雨が、タネモリさんの慟哭の叫びのように聞こえてきた。

彼の文の題名は「WHAT IS MY ENEMY」だった。単純明快「私の敵は何か」だ。平和活動家の彼にとっての敵とは「何」だろう。タネモリさんは溢れ出す思いを書き綴った。

文の内容の殆どは、ビランディン殺害について歓喜に包まれるアメリカのことだった。地元のカリフォルニアで、間近でその声を聞き、姿を見ている彼は、言い様のない感情に囚われ、眠れない夜を過ごしたという。なぜか。

それは彼の生い立ちにある。

タネモリさんは7歳の時、広島への原爆投下で、家族の殆どを失った。彼は「より多くの命が失われるのを防ぐために行った」とするアメリカのレトリックを許せず、17の時に単身アメリカに渡った。復讐のために。

タネモリさんは、アメリカの何もかもが許せなかった。戦争に戦争を重ねてもそれを正当化し続けるレトリック、それを国を挙げて支援する国民性、正義のないところに大義を作り上げ最終的に自らの行いこそ正義だとする傲慢さ。

すべて、許せなかった。

彼がアメリカに渡ったのは、そうしたアメリカのレトリックや偽りの正義を自ら身を持って示し、糾弾するためだった。そしてそのために活動した。戦後すぐの時期で日本人が渡って何かを成し遂げることは、決して容易ではなかった。それでも彼は敵地アメリカに留まった。

戦後60年以上が経ったいまも、彼はアメリカに留まっている。そして、活動を続けている。だが、それは広島の惨状を訴えるためにではない。アメリカを追求するためでもない。アメリカに復讐するためでもない。

アメリカを赦すためだ。

彼はいまとなっては、アメリカを憎み続けてきた自分を恥じている。ただし、そんな自分を赦してもいる。アメリカを赦せるように、自分も赦している。そうしなければ、憎しみに囚われて自分自身が忌むべき存在になってしまうからだ。

いや、そうなってしまった過去があるからこそ、そういう自分を捨てた。

アメリカにいる間、タネモリさんは数々の「アメリカの戦争」を見てきた。アフガン戦争もそのひとつだった。そしてその戦端を開いた911も、アメリカ国民として経験した。アメリカを赦せるようになった彼は、911の時に祖国のために泣いた。そして…502が訪れた。

ビンラディンが殺された。

911の戦争の首謀者が、死んだ。911で亡くなった人々の仇討ちがなされた。彼らの死が報われた。そして自分の周辺は歓喜に湧くアメリカ国民で溢れている―そんな状況が、なぜか彼を眠れなくさせていた。なぜだろう?

それは、オバマ大統領の演説でまた「歴史的な瞬間」という言葉が呟かれたから。またアメリカは、自らの正義が示されたと、誇りに思っていて、それが国民に伝搬して、アメリカ中が「正義は為された!」と歓喜に沸いていたから。

半世紀かけてアメリカを赦すことを決めたタネモリさんでも、違和感を感じた

眠れぬほど、アメリカを否定したい思いと、自分が培った赦しの心を否定したくない思いとの間でせめぎあって、タネモリさんはこうそれを解決した。

これはひとつの「終着点」だったんだ。

アメリカの行き場のない怒りが、ひとりのテロ指導者を葬り去ったことで、一時終着を見ることができた。そして、これ以上あのような惨劇を目の当たりにすることを恐れないで済むんだ。罪のない人たちの命が失われなくなる。「そのこと」を喜ぼうと。

眠れないほどの葛藤を抱えたタネモリさんが出した、ひとつの出来事に対する彼なりの受け止め方の表明だった。そしてそれを、彼は、誰かに伝えたくて、言葉に残した。簡単に赦せるものではない。簡単に受け入れられることではない。でも受け入れた。赦した。

彼なりの平和哲学を貫いた。その、訴えだった。

最後に彼は、こんな言葉をしたためた。

"NO MATTER WHAT CIRCUMSTANCES, NO MATTER HOW MUCH WE THINK WE ARE DIFFERENT AND THEREFORE DESERVE TO SEEK REVENGE, WE CAN ALL CHOOSE TO FORGIVE!"
「どんな状況に置かれても、そしてどんなに(彼らが)自分達とは違うと思い、だから自分には(彼らに)復讐する権利があると思っても、私たちは(彼らを)常に赦すことを選ぶことができる」

広島で原爆に被爆し、家族の殆どを失い、復讐のためにアメリカに渡り、その生涯を平和活動のために費やした、タネモリタカシさんの言葉

平和省という、平和を司る省を創設する活動の会議に向かう私にとって、この言葉はどうしても、伝えたい言葉でした。皆さんともこうして共有することができて、よかったと思います。

終わり。

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タネモリタカシさんのプロフィール
出演映画『ヒロシマ・ナガサキ・ダウンロード』での案内

胤森貴士トーマス(タネモリタカシ)
広島市出身の詩人、画家、平和活動家。
7歳の時、爆心地から1.2キロで被爆し、両親、妹、祖母を失う。
17歳で親の仇を誓い、渡米。長年の苦しみを経て、怒りから赦しへ転換する。
現在、カリフォルニア州バークレー に盲導犬ユキちゃんと暮す。

2011/03/31

REPORT:2011/3/30出演番組『ニュースの深層』で語られたことの全容

■番組内容

3/30(水) リビアへ武力介入 市民を保護するために

ゲスト:勝見貴弘(世界連邦運動本部執行理事)
司 会:土井香苗(ヒューマン・ライツ・ウォッチ東京ディレクター)

緊迫した局面を迎えているリビア情勢。
反政府勢力を抑えるために
自国民に銃を向けるカダフィ政権に対し
国際社会が武力介入に打って出ました。
「市民を保護するため」の武力介入は
果たして成功するのか?
国連問題のエキスパートに話を聞きます。

※本日のテーマ「市民を保護する責任」などが
詳しく書いてある、勝見氏総合監修の本は、
こちらで購入できます。


■全容

①リビア争乱はどうやって起きたのか

番組では、まずリビアとはどういう国なのか、いま何が起きているかを簡単におさらいしました。そして、リビアでどうして大規模な政府デモが起きたのか。その本当のきっかけは何だったのか。司会の土井香苗さんがわかりやすく説明してくれました。詳しくは、放送の直前に土井さん自身が書かれたブログの記事をツイートしていました。

この2年前の出来事を発端に、今年2月になって燃え始めた民衆の怒りは、2月17日に頂点に達します。5つの都市でほぼ同時に起きた「怒りの日」デモです。しかし、その後、リビア政府側は暴動鎮圧のためついに軍隊を出動させ、空爆まで行いはじめました。

②国際社会の行動

「怒りの日」から2週間も経たない2月26日、国際社会は行動を起こします。国連安保理を招集し、対リビア制裁決議第一弾を採択したのです。それが、国連安保理決議1970です。

この決議により、リビアには様々な非軍事的制裁が課せられました。その中に、国際刑事裁判所ICCへの捜査・訴追の付託が含まれました。日本を含め、国際社会はこの決議を支持しました。

日本はこの決議を受けて、制裁内容のいくつかを実施しています。

しかし、リビアはこうした国際社会の結束した批難を受け容れません。それどころか、反政府活動への懲罰的軍事行動をエスカレートさせ、ついに空爆をはじめます。多くの罪のない市民が犠牲になり、国外国境付近には難民があふれ出て、「人道的危機」といえる状況に近づいてきました。

③国際社会の更なる行動

国際社会はここで再び、決議1970から2週間弱でさらなる行動を起こします。3月17日に採択された、リビア政府軍に対する武力の行使を認める、国連安保理決議1973です。

これは、画期的な出来事でした。

なぜなら、かつて人道的危機という状況が誰の目にも明らかなときであっても、これほど迅速に国際社会が歩を揃えて取り組み、行動に及んだことはなかったからです。

中でも歴史的な、パラダイムシフトといえるのが、暗示的に今回の行動の行動原理となった「保護する責任」原則の適用でした。

④なぜ画期的なのか

「保護する責任」原則(略称:R2P)は、2000年にカナダ政府が主導した国際委員会が起草した新たな概念で、2005年には国連首脳会合の成果文書として、2006年には安保理で、武力紛争における文民の保護に関する決議1674で、全快一致で採択されました。

にも関わらず、この原則は誕生して10年が経っても実際に適用されることはありませんでした。そもそも、この理念はルワンダの大虐殺(1994)スレブレニツァの虐殺(1995)などの歴史的大事件で、国連を含む国際社会が有効かつ迅速に行動しなかったことの反省から生まれた概念でした。

にもかかわらず、その後も世界では、「人道的危機」と呼べる状況が、パレスチナのガザ地区、スーダンのダルフール、コートジボワール世界各地で起き続けました。国際社会は、R2Pを発動しなかったのです。保護する責任を果たしてこなかったのです。

それがどうでしょう。リビア争乱については、「人道的危機」が発生したと思われる時期から1カ月ほどで、多国籍軍が編成されて「文民を保護するためのみのための」武力行使が実行に移されたのです。なぜでしょうか?

これまで「保護する原則」が適用されなかった最大の理由は、それ自体に内包される国家主権への優位性にありました。具体的には、国家主権の主たるものとされてきた「内政不干渉の原則」これに、「保護する原則」は優先するということが、2006年の段階で安保理の総意として採択されたのです。

これが何を意味するかというと、安保理の中で国内に人道上の問題を抱える中国やロシアにとって、これまで伝家の宝刀のように使ってきた「内政不干渉」の原則が、これからは容易に適用できなくなるのです。

だから、R2Pの原則が採用されてから数々の人道的危機が世界各地で起きても、その原則が自国にも適用される恐れから、またそうした状況になったときに拒否権」を発動するという屈辱的な状況を回避するために、R2Pが安保理の決定として適用されることはなかったのです。(拒否権に関する参考文献 - 国立国会図書館

そして、中露ほか3カ国は棄権に回ったのです。そうせざるを得ませんでした。国際社会の関心はあまりにも高く、そして一様に「行動」を起こすことを望み、それはこれまでのような非軍事制裁ではもはたもたないという見解が支配的になっていたからです。

こうして渋々も、安保理では歴史的な「保護する責任」決議1973が採択され、その目的はあくまで「文民の保護」のための行動を起こすこと。そのための飛行禁止区域の設定であり、その強制のための武力行使容認でした。また「文民の保護」を最優先にするため、人道支援活動を阻害しないこともリビア政府をはじめ、武力行使に参加する各国に強制しました。まさに、「保護する責任」の原則に沿ったかたちの行動を起こしたのです。

⑤原則は本当に守られているのか

「保護する責任」に基づいて行動する場合、とくに軍事行動を起こす場合には、その正当化要件があります。

この6つの要件を満たさなければ、軍事行動は起こしてはならないことになっているのです。ところが、今回の行動がこれら6要件全てを満たしているとはいえません。

1. 正当な権限 (Legitimate Authority)
2. 正当な理由 (Just Cause)
3. 正当な意図 (Right Intention)
4. 手段の均衡 (Proportional Means)
5. 合理的見通し(Reasonable Prospect)
6. 最後の手段 (Last Resort)

この中で満たしているといえるのは、1,2,3,4くらいで、5,6についてはその根拠となるものが示されていません。たとえば、「合理的見通し」というのは、行動を起こすことで事態を悪化させない合理的見通しがあることを検証したか否かを指ます。「最後の手段」は、まさにこれまで「交渉、停戦監視、仲介など」あらゆる外交的努力が全て尽くされたという道筋がなければなりません。

ところが、今回国際社会が起こした行動というのは、どちらかといえば行き当たりばったりで、早い行動ではありましたが、「拙速」だったという批判も免れないものです。そのため、「間違い」が生じる可能性があるため、安保理は決議1970で、リビア以外の国連の作戦に参加する国々に対しても、ICCの管轄権を受け容れるか、自国の管轄権に服しなさいという要請も行ったのです。いわば、決議1970は1973での武力行使で間違いが起きた場合に備えての予防線だったのです。

⑦それでも歓迎されるべきパラダイムシフト

国際社会は、こうした欠点がありながらも、今回の決議が執行されることを強く望んでいます。Twitter上での議論でも、 #r2p というタグで検索すると、さまざまなソースを持ち寄って賛否両論を闘わせつつも、今回の「保護する責任」原則の初適用を歓迎する意見が圧倒的に多いようです。

放送では、国際人権団体の支部のトップを務める土井さんと、世界連邦運動という、恒久世界平和達成のための運動の役員を務める私が、この点について強く同意しました。完全ではないにしても、暗示的であっても、間違いなくその理念に基づいて、その原則に則った形で、具体的な行動が起こされている。それが、無辜な人の悲劇を早く終わらせ、争乱に荒れる国に平和をもたらすための行動であることを、誰もが実感している。

たとえそれが軍事を伴う行動であっても、国連憲章が禁じる武力行使であっても、イラク戦争のときのように用意周到なシナリオに則らずとも、国際社会の総意をこんなにも早くまとめ、こんなにも早く行動することができた。そして、我が国日本もこれを支持・支援している。

⑧日本が果たせる役割には何があるか

これを、平和立国日本の私たちは歓迎すべきだという思いを、放送の最後で述べました。そしてもし仮に、我が国日本が今後、こうした行動に関わる決意と覚悟があるならば、憲法九条の範囲内で、国民一人一人が行える貢献があるとして、国連緊急平和部隊(UNEPSを短く紹介しました。

また実存しない部隊ですが、だからこそ、日本が作れる。日本が先頭に立って作れる。そう説いて、放送を終わりました。

ほかにも、HRTF(人道救援任務部隊)という、今回の大震災のような大規模自然災害に特化した、日米“共同”部隊の創設提案も紹介しようと思いましたが、時間がなく、諦めるしかありませんでした。

UNEPSやHRTFについての詳細は、私の議員秘書時代の最後の仕事で総合監修を担当した書籍、犬塚直史著『脱主権国家への挑戦~支えあう平和を求めて~』にて詳しく解説しています。


以上、放送では順序立てて話せなかったことまでここでは綺麗にまとめてしまっていますが、放送の全容はこのようなものでした。

ご精読感謝いたします。

(了)

2011/03/14

【計画停電情報】TEPCO発表の計画停電関連情報の非公式ミラー※随時更新(3/21-26版)

Click the title above for English version of this information


TEPCO東京電力発表の輪番停電(計画停電)が実施される予定の以下の情報をまとめた。他にも家電情報WATCHの情報がよくまとめられている。


またこんなもの↓も登場。是非ご活用を。

「東京電力計画停電カレンダー」



(1)対象地域
(2)対象時間帯
(3)各社鉄道運行情報 

基本情報の出典:東京電力ニュースリリース(3/20版)

(1)対象地域 ※サイトが重い場合は右クリックで保存しましょう。 


参考:東京電力「想定される停電エリア」

東京   http://www.tepco.co.jp/images/tokyo.pdf 
神奈川  http://www.tepco.co.jp/images/kanagawa.pdf 
埼玉   http://www.tepco.co.jp/images/saitama.pdf 
千葉   http://www.tepco.co.jp/images/chiba.pdf 
栃木   http://www.tepco.co.jp/images/tochigi.pdf 
群馬   http://www.tepco.co.jp/images/gunma.pdf
山梨   http://www.tepco.co.jp/images/yamanashi.pdf
沼津   http://www.tepco.co.jp/images/numazu.pdf
茨城   http://www.tepco.co.jp/images/ibaraki.pdf


(2)予定地域グループ ※それぞれの時間帯のうち3時間程度 



21日(月曜)
第4G 15:20~19:00 第5G 18:20~22:00
※21日正午までに実施の可否を決定

22日(火曜)
第5G 06:20~10:00
第1G 09:20~13:00 
第2G 12:20~16:00 
第3G 15:20~19:00 
第4G 18:20~22:00 
第5G 13:50~17:30 
第1G 16:50~20:30


23日(水曜)
第1G 06:20~10:00
第2G 09:20~13:00 
第3G 12:20~16:00 
第4G 15:20~19:00 
第5G 18:20~22:00 
第1G 13:50~17:30 
第2G 16:50~20:30


24日(木曜)
第2G 06:20~10:00
第3G 09:20~13:00 
第4G 12:20~16:00 
第5G 15:20~19:00 
第1G 18:20~22:00 
第2G 13:50~17:30 
第3G 16:50~20:30


25日(金曜)
第3G 06:20~10:00
第4G 09:20~13:00 
第5G 12:20~16:00 
第1G 15:20~19:00 
第2G 18:20~22:00 
第3G 13:50~17:30 
第4G 16:50~20:30


26日(土曜)
第4G 06:20~10:00
第5G 09:20~13:00 
第1G 12:20~16:00 
第2G 15:20~19:00 
第3G 18:20~22:00 
第4G 13:50~17:30 
第5G 16:50~20:30



※需要が増加し、供給力の不足が懸念される場合に、停電が実施される。


(3)各鉄道会社運行情報(国交省) 


http://www.mlit.go.jp/saigai/index.html

ATTENTION to Foreigners Living in Japan: TEPCO's Rolling Blackout (SB) Info Release 3.21-26

日本語でご覧になるには、をクリックしてください。


ATTENTION: Dear All Foreigners in Japan


During the past week, Facebook kindly provided information on TEPCO (Tokyo Electric Power Company)'s Scheduled Blackout or Rolling Blackout (SB) which went into effect beginning March 14, for foreigners and foreign users who are concerned of this issue. 


Here's some updated addendum to their announcement with updated info directly from NHK's data broadcast based on TEPCO's March 20 Press Release (English).

ALSO AVAILABLE: A Google SB Calendar (partly in English)


Addendum 1: 
SB Time Groups: Up to 3 hours within this time range 



Mon, March 21

No Blackout Scheduled until noon.

G2 15:20 - 19:00*

G3  18:20 - 22:00*

 *SB for these groups will be determined by noon time.

Tue, March 22

G5 06:20 - 10:00
G1 09:20 - 13:00 
G2 12:20 - 16:00 
G3 15:20 - 19:00 
G4 18:20 - 22:00 
G5 13:50 - 17:30* 
G1 16:50 - 20:30*


Weds, March 23

G1 06:20 - 10:00
G2 09:20 - 13:00 
G3 12:20 - 16:00 
G4 15:20 - 19:00 
G5 18:20 - 22:00 
G1 13:50 - 17:30* 
G2 16:50 - 20:30*

Thu, March 24

G2 06:20 - 10:00
G3 09:20 - 13:00 
G4 12:20 - 16:00 
G5 15:20 - 19:00 
G1 18:20 - 22:00 
G2 13:50 - 17:30* 
G3 16:50 - 20:30*


Fri, March 25

G3 06:20 - 10:00
G4 09:20 - 13:00 
G5 12:20 - 16:00 
G1 15:20 - 19:00 
G2 18:20 - 22:00 
G3 13:50 - 17:30* 
G4 16:50 - 20:30*

Sat, March 26

G4 06:20 - 10:00
G5 09:20 - 13:00 
G1 12:20 - 16:00 
G2 15:20 - 19:00 
G3 18:20 - 22:00 
G4 13:50 - 17:30* 
G5 16:50 - 20:30*

* SB to be enforced when energy demands exceeds supply.


Addemdum 2: 
A multi-lingual portal for foreign language speakers has been set up by a small group of willing people from TUFS (Tokyo University of Foreign Studies). Refer to their website on updates in more than 20 languages. 
https://nip0.wordpress.com/author/0bo5/ 


Official Release by Facebook: 


Japan Crisis Resources


Person Finder, Shelter Information, Resources and Links
Google - Crisis Response (English)

Scheduled Blackout
Yahoo! JAPAN Emergency Information (English)

2011/03/13

Disaster: How my home looked like after the Great Eq hit Tokyo on 3-11

Japanese bilingual version

HOW OUR HOME LOOKS LIKE AFTER THE GREAT EQ (2011 Tohoku district- off the Pacific Ocean Earthquake) HIT US:

A PHOTO RECORD (12/3/2011)



DISHES AND EMPTY WINE BOTTLES IN THE CLOSET, SCATTERED
(*The Ferrari mini-car was the last present given by my late grandmother)




MY FAVORITE INTELLIGENT FAX MACHINE, DESTROYED




DESPITE THE WALL-MOUNT, CLOSET MOVED 20 CM OFF THE WALL



GLASSES IN THE CLOSET, SHATTERED. TOOK THIS COUNTERMEASURE

PHONE STAND STRUCK BY THE ROUTER. TOOK THIS COUNTERMEASURE


2010/12/24

勝手訳:"Forbidden Colours" by David Sylvian

Click the title for the true-to-the original translation of this song.

邦画『戦場のメリークリスマス』の本編では決して使われることのなかった隠れた名曲がある。デイビッド・シルヴィアン(David Sylvian)という英国アーティストが、坂本龍一作曲の『戦場のメリークリスマス』(原題「Merry Christamas, Mr Lawrence」)に歌詞をつけ編曲したもので『Forbidden Colours』(邦題「禁じられた色彩」)という曲だ。


国内販売のサントラには、どうやらこの曲は含まれていなかったようだが、俺が在学時代にアメリカで購入したサントラにはこの曲が含まれており、俺は長年、なぜこの曲が本編で使用されなかったのか不思議に思っていた。


ネットでの情報を探ってみると、この曲は三島由紀夫の『禁色』にインスピレーションを得たもので、同性愛を「禁じられた色彩(いろどり)」として歌った曲だという。ならば、この詩が映画本編で使われなかったことも納得がいく。訳詞はあるようだが、個人による要約でしかないことがソースを辿ってみてわかった。


大島渚監督はあらゆる形の情愛を分け隔て無く描くことで有名で、同性愛を題材にした作品も多いが、『戦場のメリークリスマス』は単に「禁じられた色彩」=同性愛を扱った映画ではないと思う。また単なる反戦映画でも、単なる戦争映画でもないと思う。


俺はこの曲を繰り返し聴くうち、この曲が映画本編で使われてもおかしくならないテーマを感じ取った。それは、「禁じられた色彩」=戦時における人間愛の発現。これこそが「Foribidden Colours」なのではないかということ。そしてこの色は戦時には交わることが禁じられ、戦争が持つ色の無い、灰色の世界を彩る色彩(いろどり)の誕生こそが、戦時に禁じられる人間愛の発現なのではないか、そうした戦時における、人としての当然の心の葛藤を訴えたいのではないか。


こういうまったく自己(勝手)流の新解釈で、唯一の既存の和訳(要約)といえるものを練り直し新訳としてみた。ただ、キリスト教の禁忌(タブー)としてのソドミー(男色)を唄うくだりもあるので、こうした部分も自己(勝手)流でかなり強引にアレンジしてみた。



Readaptation by Etranger

手にした傷は けっして 癒えることはない

信じてさえいれば報われると 私は思っていた

彼らとの間には 越えられない 距たりがある
イエスの教えに従うべきか 内なる衝動に委ねるべきか

この愛は 禁じられた色彩を帯びる
けれども私は 人の営みを信じる

無意味な歳月があっという間に過ぎさり 
無数の人々が喜んで 命を捧げていく
それでも 何も残らないのか?

わきおこる衝動を抑えようと
私は心の奥深くに 自分の気持ちを沈める

この愛は 禁じられた色彩を帯びる
けれども 私はいま一度 人の営みを信じる

己の拠って立つ所すら 信じきれないのに
何もかも盲目に 信じこもうとしつつ
答えのない問いを 繰り返す自分がいる

彼らとの間に 越えられない距たりを感じる 私がいる
イエスの教えに従うべきか 心変わりすべきか

この愛は 禁じられた色彩を帯びる
けれども私は 人の営みを信じる
この愛は 禁じられた色彩を帯びる
けれども 私はいま一度 人の営みを信じる

Original lyrics by David Sylvian (thru dictation) 

The wounds on your hands never seem to heal
I thought all I needed was to believe

Here am i, a lifetime away from you
The blood of christ, or the beat of my heart
My love wears forbidden colours
My life believes

Senseless years thunder by
Millions are willing to give their lives for you
Does nothing live on?

Learning to cope with feelings aroused in me
My hands in the soil, buried inside of myself
My love wears forbidden colours
My life believes in you once again

I'll go walking in circles
While doubting the very ground beneath me
Trying to show unquestioning faith in everything
Here are you and i, a lifetime away from you
The blood of christ, or a change of heart

My love wears forbidden colours
My life believes
My love wears forbidden colours
My life believes in you once again