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2011/12/20

国民を守る為の国家戦略とは~国家予算の適切な運用に関する政策提言~(上)

発端となった情報
野田政権は19日、来年度予算案に盛り込む在沖縄海兵隊のグアム移転関連費を、概算要求額の約519億円から80億円程度に削減する方針を固めた。米議会が2012会計年度のグアム移転予算を全額削除することで合意したため、日本が多額の関連費を計上することは国民の理解を得られないと判断した。
日本、グアム移転費を大幅減へ 米議会の全額削除うけ(2011年12月20日 朝日新聞)
 本家は日本の拠出予算の使用も凍結すると決定したのに何故?
第2207節 グアム再編
(a) 資金使用の禁止。本項サブセクション(c)に記載の定めを除き、下記条件が満たされるまで、本法律による歳出を承認されるいかなる資金、及び国防省所管で現地において実施される軍事建設事業に関して日本政府が負担したいかなる金額についても、2006年5月1日に調印された「再編実施のための日米ロードマップ」の実施のためにこれを割り当てることを禁ずる。
米連邦議会規則委員会 :米上院で可決された2012会計年度米国防権限法案に付随する両院協議会報告書におけるグアム再編に係る箇所(p.928-929)の抜粋粗訳より。
前段~経済平和研究所の試算にヒントを得る~

日本の来年度予算は約90兆円で確定しそう。昨日プレゼンした世界の紛争の25%がなくなったら200兆円の国際公共資金ができるという話を思い出す。人口1.2億人の日本の国家予算て、なんて膨大なんだろう。そしてその膨大な予算は、本当に国民のために有効に運用されているのだろうか。国際公共資金200兆円の使い道。そのうち【23兆円を日本の地震・津波復興支援】に遣って、その他国連ミレニアム開発目標の充足、地球温暖化対策資金、EU財政危機支援に遣って、100兆円残るというのだ。

(1)地球規模で紛争が25%減少した想定で導出される国際公共資源
(2)国際公共資源200兆円で何をできるかの試算

日本の東北大震災復興予算の規模


地震・津波復興支援資金23兆円というと、日本の来年度の国家予算90兆円約25%だ(国債費を除く一般歳出規模は約70兆円なので実質的には約32%に及ぶ)、では実際の予算の中ではいくら同じ目的で遣われる予定なのか。
「復興予算」でのグーグルニュース検索結果

現在のところ、来年度の復興予算規模は判明していない。紛争25%減少後の国際公共資金の計算は、GPI(世界平和度指数)で有名な英国の経済平和研究所が2010年度の数値を基準にして行った。では日本政府の2010年度の復興予算はどの位だったのか。これなら調べられる。

財務省情報によると、10年度復興予算(補正予算)は第3次予算まで合わせて総額約17兆円。経済平和研究所が試算した23兆円には及ばない。しかも最大規模の11兆円となった第3次補正移行は復興債発行で賄われている。つまり財源がないのだ。

政府はこれまでの補正予算に加え、第4次補正予算を今日20日公開した。その規模は 2.5兆円(資料では何故か億の単位で表記してある)。但しこれは、厳密には復興予算ではない。復興以外のための第四次補正と考えたほうが妥当だろう。

平成23年度第一次補正予算 - 4兆153億円
平成23年度第二次補正予算 - 1兆9,988億円
平成23年度第三次補正予算 - 11兆7,335億円
平成23年度第四次補正予算 - 2兆5,345億円
4次補正予算を除いた総額 - 17兆8,853億円
4次余生予算を含めた総額 - 20兆4,198億円
(財務省公式サイト「平成23年度予算」より)
これまでの情報をまとめると、政府が純粋に国会に承認された予算を財源として復興資金に割り当てることができたのは、総額の約17兆から約11兆(復興債発行)を差し引いた約6兆円ということになる。経済平和研究所が試算した23兆円には遠く及ばない。では、来年度予算はどうなるのか。 

来年度は補正ではなく一般会計予算の概算要求の段階で復興資金が組み込まれることになる。このことについて、政府は今年9月に方針を閣議決定している。 そこに「『日本再生重点化措置』を実施する」とあり、規模が明記されている。7000億円だ。


平成24年度予算の概算要求組替え基準について ※当該箇所の抜粋
(2)我が国経済社会の再生に向けた取組(「日本再生重点化措置」)
我が国経済社会の再生に向けた取組として、歳出改革により捻出された財源を用いて、再生に向けてより効果の高い施策に予算を重点配分する取組(「日本再生重点化措置」)を実施する。
① 我が国経済社会を再生し、国民一人ひとりが希望をもって前に進める社会を実現するため、下記②ロ)に掲げる分野において、将来を見据え、新たな雇用の創出を含め、我が国経済社会の再生に真に資する分野に予算を重点配分する取組として、「日本再生重点化措置」を実施する。その規模は、7,000億円規模とし、歳出の大枠である約71兆円の枠内で、最大限の予算の重点化を図る。
(2011年9月23日 閣議決定 - 財務省)

 「7000億円」という数字の価値


この7000億円という数字。日米関係について関心のある方すぐにピンとくると思う。在日米軍の年間経費負担額と同額だ。いまこの数字で検索したらちょうどコレがヒットした。
米軍経費負担 7000億円(2011年12月13日 しんぶん赤旗)
「潜在的紛争地域」とは何か

沖縄知事室によると、防衛省はその公式パンフレットで沖縄について、「沖縄は、米本土やハワイ、グアムなどに比べて、(中略)朝鮮半島や台湾海峡といった潜在的紛争地域に近い(近すぎない)位置にあります。としているという。この「潜在的紛争地域」とは何を意味するのかについて、沖縄県知事室は半年前に政府に質問書を送ったのだが、いまだ返事がないという。なので、この言葉の明確な定義は判らない。判っているのは、政府は日本がそうした地域に隣接するからこそ、在日米軍が必要だと主張しているということだ。
「在日米軍・海兵隊の意義及び役割」(防衛省)について
(2011年6月1日 沖縄知事室)別紙3頁の抜粋部分

4.沖縄の地政学的位置
《P9》1.潜在的紛争地域との位置関係
◎ 沖縄は、米本土やハワイ、グアムなどに比べて、(中略)朝鮮半島や台湾海峡といった潜在的紛争地域に近い(近すぎない)位置にあります。
これが、そのパンフレットと同様の内容を持つ公開資料。現物をいまも持っている。 「我が国周辺の安全保障環境」という項目だけで、全体の3割の紙面を割いていることが判ると同時に「潜在的紛争地域」という用語は一切使われていないことも判る。
防衛省作成の国会配布・一般公開資料
在日米軍及び海兵隊の意義・役割について(2010年2月 防衛省)
 つまり、国会内での認識としては、資料の全体の3割も使って説明する周辺地域の脅威は、もはや「潜在的」ではなく「顕在している」という認識であると見ていい。だから「潜在的脅威」などという曖昧な言葉で脅威が顕在していないことを表明したため、防衛省側は答えに窮しているのであろう。


「中」に続く)



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