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2015/01/26

緊急コラム:邦人人質殺害事件② #ISIS 最高指導者バクダディの狙いは金ではなく、最高権力の継承と拡大 #HarunaYukawa #KenjiGoto #ISIS

追記:ISISが後藤氏との交換による奪還を目指すサジーダ・アル=リシャウィ(Sajida al-Rishawi)死刑囚の素性については、CNNが特集記事を組み、日本のパートナーである朝日が既に日本語版記事も発しているのでそこで彼女の持つ重要性が把握できる。ここではCNNの記事に沿って追記する。


リシャウィ死刑囚は05年のヨルダンホテル自爆テロ事件で自爆テロに成功して死亡したの首謀者の妻で、妻の方はテロに失敗し当局に拘束され、06年死刑を宣告された。しかしなぜか同年特赦がおり、死刑は執行されず、13年12月に再開されたが、彼女の番はまだ回ってきていないという状況にある。

リシャウィ死刑囚は06年に米軍の空爆により殺害されたアルカイダの最高指導者だったアブ・ムサブ・アル=ザルカウィ(Abu Musab al-Zarqawi)の”右腕だった”男の妹である可能性が高いと、ヨルダン副首相のマルアン・ムアシャー(Marwan Muasher)はCNNに語った。元米軍デルタフォース司令官のJ・リース中佐(Lt. Col. James Reese)によれば、その男は現ISIS最高指導者であるアブ・バクル・アル=バクダディ(Abu Bakr al-Baghdadi)の妹である可能性があると考えている。



2014年2月に完全に分裂するまで、アルカイダとISISは一心同体だった。ISISの前身は2004年に設立されたアルカイダ・イン・イラクなのだが、ISISと別の内部組織アル・ヌスラ戦線との間で内紛が激化し、ついにアルカイダに絶縁を宣言され、ISISはアルカイダから独立した別組織として生まれ変わった。

その指導者となったのが、アルカイダ・イン・イラクの創設者であり最高指導者のザルカウィの側近だった、バグダディ司令官だった。ザルカウィにアルカイダが支配されていた頃に、リシャウィはおそらくザルカウィの命令で自爆テロを実行させられた。しかし彼女はテロ決行当時、自爆装置のついたベルトを着用しておらず、また夫は彼女とは反対外のアイルで、自爆時には場所を離れるように忠告したらしい。

つまりザルカウィは彼女を殺すつもりだったが、彼女の夫は自分だけ自爆するつもりだった。おそらく、彼女の兄で副官の命、あるいは願いに従ったのだろう。つまり、今回の捕虜交換・妹の奪還は、バクダディにとって私怨以外の何物でもないが、同時にアルカイダから分離独立した自身の最高権力の掌握・継承を示す儀式のようなものなのだろう。

アルカイダ時代にザルカウィに強要された妹による自爆テロ。そして囚われの身となった妹。彼女を取り返すことこそが、ザルカウィに対する私怨を晴らすことであり、自らがザルカウィを超える指導者となったことを示すことにも繋がるのだろう。

だからこそ、13年8月に既に殺害していた湯川氏は当然ながら眼中になく、後藤氏を取引材料として死刑執行直前の妹を取り戻すこの作戦には、バクダディ司令官の並みならぬ意思が込められていると考えるのが賢明だ。ただ同時に、時間的制約があり、万が一死刑を止められなければ、その時取引材料としての後藤氏は価値をなくす。つまりリシャウィの存命中が、日本政府の有効交渉期間となる。

更にバグダディはこの作戦をなんとしても成功させたいため、譲歩に応じる可能性もある。問題はヨルダン側で、有志国軍を主導する米英軍も決してバクダディの要求に応えようとはしないだろう。そして日本政府はそのことを十分承知している筈だ。この一件で存在感を示せば、有志国軍に加わりやすくなる、という位に考えているかもしれない。ヨルダンにも恩を売れる。

こうした背景情報を日本政府も把握しているのだとすると、後藤氏の奪還はますます遠い現実のように思えてくる。が、しかし。政府に捕虜交換の意思が無いと思えるからこそ、同胞を憂う国民が自ら行動を起こすしかないのである。各国様々な思惑が渦巻く中で、今の安倍政権ほど信頼できない政権はないのだから。

以上

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