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2011/12/20

国民を守る為の国家戦略とは~国家予算の適切な運用に関する政策提言~(中)

潜在ではなく顕在する紛争地域という認識へ


では言葉遊びをやめて沖縄は「潜在的紛争地域」ではなく「顕在する紛争地域」に隣接するという認識に置き換えて、経済平和研究所が試算した「紛争の25%を減らした世界」というものの想定に、この日本の周辺地域の紛争も加えた形で考えを進めてみるとする。
つまり、防衛省が2010年2月の時点で定義した「我が国周辺の安全保障環境」の「周辺地域」とされる地域を「顕在する紛争地域」と認識することから始める。まず資料で防衛省が先頭に挙げたのが、北朝鮮、そして中国、ロシアと続く。この3カ国が「顕在する紛争地域」の当事国ということだ。

北朝鮮を「顕在的脅威」の当事国と考えるのは、一般の国民認識からしても簡単なことだろう。国民の危機感は、このように憲法改正の世論調査に顕著に現れることが統計で判っている。

読売新聞による世論調査結果(2008-2010年)総括
憲法そのものの改正、9条の改正、そしてその扱い、この3つについて日本国内が安全保障上の危機にあるという認識が広まっていると、国民は憲法の改正を容易に選択しうることがわかった。これは、これまで感覚的にはいわれてきたことだったが、最近の世論調査に基づいて量的かつ視覚的に示されたことは、近年なかっただろう。
2010年2月、防衛省はこうした「顕在する脅威」から日本を守るために在日米軍及び海兵隊が必要だということを示すために、この資料を国会内で配布した。その後、同年5月に韓国哨戒艦「天安」の沈没事件が起き、それを機に当時の鳩山政権が日米共同宣言を発したのは記憶に新しいだろう。

この「天安沈没」事件の真相については諸説あるが、この日本の「顕在する紛争地域」で起きた国際的大事件が、その後の日本の安保政策に大きな影響を及ぼしたことは否定できない。直接最も影響を受けたのが、普天間移設に関わる日米合意の進展だろう。


天安沈没事件に関する諸説の一例:
韓国軍艦「天安」沈没の深層 (2010年5月7日 田中宇)


顕在的脅威による普天間移設問題への影響

そして普天間移設に係るグアム移転協定が推進されると、予算が動くことになる。事実、天安事件が起きた10年5月に調印された日米合意により計画が進展し、日本が負担する予定だった60億ドル(約7000億円) の一部が実際に拠出されるようになった。


共同発表 日米安全保障協議委員会(2010年5月28日 外務省)
防衛省が発表した2011年度予算に計上したグアム移転関連経費は、532億円12年度も同規模で政府は100億円規模に減らすというが、800億円が既に支払われている事実に変わりはない。

「平成23年度予算におけるグアム移転関連経費について」から抜粋
2006年5月の米軍再編に関するロードマップ合意における2014年までの在沖米海兵隊のグアム移転完了を実現するため、防衛省は、在沖米海兵隊のグアム関連経費として、平成23年度予算に総額約532億円を計上。
(2011年4月 防衛省)
 米議会両院の軍事委員会は、来年度の国防権限法の付帯文書において、日本政府が拠出した全ての金額について、条件が満たされるまでその使用を禁ずることを国防省に通達している。つまり日本政府が拠出した800億円は、宙に浮いたままとなる。

※当該箇所の抜粋(太字強調追加)
下記条件が満たされるまで、本法律による歳出を承認されるいかなる資金、及び国防省所管で現地において実施される軍事建設事業に関して日本政府が負担したいかなる金額についても、2006年5月1日に調印された「再編実施のための日米ロードマップ」の実施のためにこれを割り当てることを禁ずる。
ここで振り返ってみよう。

2010年、政府(防衛省)は、国民に配布するパンフレットでは日本の周辺地域を「潜在的紛争地域」としながら、国会内では「顕在する紛争地域」としての認識を高めようとしていた。その顕在する脅威対応のため、在日米軍・海兵隊が必要という論理整理だった。

政府は、この「顕在する脅威」に対応するためにとくに在沖海兵隊が必要だからと、抑止力維持のために普天間合意を進め、日米合意の調印に至った。そして、その合意に基づき、米側が予算承認もしていない計画のために
800億円の国家予算を既に投じているのが現状の大まかな総括である。

もし普天間合意が現在報じられているように推進されるのならば
政府は拠出した800億円の上にさらに6200億円を拠出することになる。このコストは、日本を「顕在する脅威」から守るための抑止力のコストである。(参考)「普天間」でグーグルニュース検索した結果

問題は、このコストが必要かどうかだ。

「下」に続く)




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