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2011/12/20

国民を守る為の国家戦略とは~国家予算の適切な運用に関する政策提言~(下)

問題提起:日本の国家予算は適切に配分されているのだろうか?我が国は、既に年間7000億円の国家予算を在日米軍駐留費に費やしている。これも、北朝鮮など周辺地域の「顕在する脅威」から日本を守るためのコストである。日本政府は更にこの上に、在日米軍の移転関連費用として7000億円を支払う用意があり、その内800億円を既に拠出している。

在日米軍の移転関連費は累積的に支払われるものだから、年間予算の駐留経費と単純に合算して「顕在する脅威に対するコスト」とするのは、フェアではない。しかし少なくとも、我が国の政府は
年間7000億円支払っているそのコストの上に、更に7000億円を今後5年間の間支払う積もりでいる。

ここで、来年度の一般会計予算で政府が閣議決定して
「日本再生重点化措置」を実施する為の7000億円の話 を思い出してもらいたい。我が国の政府は、「顕在する脅威」から守る為に在日米軍駐留経費7000億円+グアム移転費負担資金7000億円の国家予算を確保している。来年度の復興予算は、現時点では同額の7000億円だ。今年度の第3次補正予算の11兆円は、復興債の発行でやっと賄われた。

おかしくないだろうか。


「顕在する脅威」に対応するコストとは?


経済平和研究所の試算に立ち戻る

大変長い前置きとなったが、ここでGPIを開発した経済平和研究所の試算に戻るとする。

経済平和研究所は全世界の紛争の
25%が減少したら、国際公共資産として200兆円の資金が生まれると試算した。この「紛争」の25%に、「顕在する脅威」に囲まれている日本の資金が含まれるとどうなるだろうか。つまり、日本がこの顕在する脅威としての紛争を除去したら、どうなるのだろうか。

日本にとって顕在する紛争が除去されると、日本の国家予算のうち
7000億円が他の予算に転用できるようになる。在日米軍の存在が不要になるからだ。すると、復興予算財源として常に7000億円を確保することが可能になる。むしろ、この7000億円を災害対策基金としてプールすればよい。

11年、我が国の政府が東北大震災対策費用として計上した予算は、総額
17兆円である。このうち11兆円は、復興国債を発行することで賄われ、一般会計予算からはいつものように7000億円の「顕在する脅威」対応予算として在日米軍駐留費用が計上されていた訳だ

重大な疑問が湧かないだろうか。



国民にとって真に「顕在する脅威」とは何か?


「顕在する脅威」として、不安定な地域に日本が隣接していることは、これは感覚的にもわかる。では、3.11の東北大震災によって実質的な被害を受け、経済的打撃を受け、生活もままらなくなっている人々にとって、そして、不確かな情報を与えられ生命・健康・未来の保証が得られない私たちにとって、現状の生活不安ほどの「顕在する脅威」があるのだろうか?

もし、政府が国民の現状こそ「顕在する脅威」であるという認識を持っていたら、国防予算よりも先に復興予算を確保し、仮に国債を発行するとすればそれは復興予算以外を補填する為、という順序にならないだろうか?そして、政府が取り組むべきことは国防上の「顕在する脅威」を緩和する努力ではないか?


政府が毎年計上している、在日米軍駐留経費を含む防衛予算は「顕在する脅威」に対応し、又備える為の予算である。しかし、いまそこにある国民が直面する「顕在する脅威」には、より急迫性が伴うのではないだろうか?なのに、政府は国民の直面する脅威以外のものに1.4兆円を拠出する用意があるのだ。


国民の直面する脅威に取り組む二正面戦略の提言


国民が直面する生活の脅威と、国防上の脅威の二正面の脅威に対し政府が取り組むべきことは二点。



まず

①外交政策により国防上の脅威の緩和を図り防衛予算の縮小を実現する。



次に、

②縮小した予算を常設の災害対策資金としてプールし、これを国債を発行する前に復興予算の不足分の補填に割り当てる。


政府の責務
この①の目標を目指すにあたり、在日米軍再編についても無駄な拠出は極力控える。まず、米側が予算執行権限のある議会の決定により日本の拠出金の凍結を決定事項としたのだから、これまでに拠出した800億円を直ちに回収し、復興財源に割り当てる。

800億円
という金額は、予算規模が兆を越える復興財源としては少ないかもしれない。しかし、その800億円分の復興国債が発行されているという不条理は解消しなければならない。いまの日本の財政で、遊ばせておく金など1円もないのである。米議会が凍結した800億円は直ちに回収すべきである。

国会の責務

更に①の目標の為の無駄排除の一環として、グアム移転予算の総額7000億円について、国会はその妥当性の調査を行い、防衛省が海兵隊・軍属の人員を水増ししたという疑惑(公電により暴露についても事実関係を調査し、必要な金額調整を行うべき。

国会は、グアム移転係る予算については、
①水増し疑惑に関する事実関係の調査、及び②米議会が国防権限法に基づく国防省のマスタープラン提出を受けてより合理化された米側の予算の提示が完了するまで、防衛省の概算要求を承認しないことを方針とすべきである。

外交の責務

国会のこの方針を受け、政府は、グアム移転に係る費用として拠出予定の金額6200億円及び回収する拠出済みの800億円を合わせた総額7000億円を、当面の常設の復興財源として割り当てることを閣議決定し、国会にその承認を求め国是とし、米側に伝える。

こうしてまず
7000億円のグアム移転費用の復興費転用を果たすのと並行して、防衛省が「顕在する脅威」として挙げた北朝鮮・中国・ロシアとの外交政策による脅威緩和を行う。これは、現状の半島情勢を勘案すると、日本にとっては好機となりうる。だがその機会を活用できるかどうかは政府次第である。

対北朝鮮政策転換の機会

昨晩の日経CNBC NEWS ZONEで、韓国延世大学の武貞秀士教授が、北朝鮮は当面対外的な活動を慎むようになるだろうと予測している。まずは喪に服す必要がある為、あらゆる対外的行動を自粛するだろうという。したがって対外的な軍事行動も含め、六カ国協議への参加の可能性すらないという。

政府・国会・政治家は真の脅威から国民を守れ!


対中・ロシアにおいても同じである。日本が経済・財政的に弱っている今こそ、外的脅威に備えなければならない。その「心理」はわかる。しかしより切迫した脅威がすでに国民の生活を蝕んでいるのだ。国民が現在の日本を安全と思えないのは、北朝鮮や中国、ロシアが隣に存在しているからではない。



我々日本国民にとっての「いまそこにある危機」とは、日々不安に晒され、安心して生活が出来ず、安心して食料や水も摂取できず、安心して子供を外に出すことも、子供の将来を思うことも出来ず、安心して働くこともできず、安心して将来の生活を展望することもできない、この「状態」にこそあるのだ。

政府・国会・政治家は、いま日本が直面する本当の危機が、「顕在する脅威」が何であるかを定量化し、それを既存の他の脅威と比較して十分に検討した上で、今何が必要なのか、国民に何が必要なのか、将来の為に何が必要なのかを総合的に勘案して、国家予算という国の財産を有効に活用してほしい。



今こそ、政府は国家の安全保障よりも、人間の安全保障を優先しなければならない。
国民が求める安全を満たしてこそ、国家は国家足りえるのである。


以上



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