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2012/01/11

脱原発:「終末時計」が零時5分前となった背景と科学者らの提言


原子炉だけでなく、その管理の問題にまで踏み込む科学者たち

はじめに

2012年1月10日、米誌 「原子力科学者会報(BAS:Bulletin of the Atomic Scientists)」 が、核戦争等による人類滅亡までの秒針を示す「終末時計」を2年前の2010年から1分進め、零時5分前に進めたと発表した。この件について、国内外の報道で、福島の原発事故の問題に触れた、とやんわり報じられているが、事実は奇なり。BASの科学者らは、福島の問題を名指しで原子力発電所の原子炉の設計、管理・監督にまで触れ、より踏み込んだ提言をしていることがわかった。

『終末時計』が秒針を進めると更新される「タイムライン」での記述

AFP・時事の報道を含む一連の報道はあくまでBASのこのプレスリリースに基づくものだ。しかし、BASではこのプレスリリースに基づいてタイムラインというものを作成する。1947年の設置以来、核に関する重要事案が発生した年又はその翌年に更新されるものだ。

今回は2011年の重要事案に合せて2012年に更新された。
そのタイムラインには、こう表示されている。

午前零時5分前
2012: "safer nuclear reactor designs need to be developed and built, andmore stringent oversight, training, and attention are needed to prevent future disasters;"
より安全な原子炉が設計及び建造されなければならない。また、将来の災害を防ぐために、より厳格な監督、訓練が行われ、かつ十分な注意が払われる必要がある


このように、BASの科学者たちは、午前零時5分前と、2010年から1分秒針を進めた理由について、明らかに2011年度の核に関する重大事故である福島の原発事故に関連して、原子炉の設計の問題だけでなく、その管理における厳格な監督と訓練の必要性を提言しているのである。

公式ステートメント(声明)にも同じ記述を掲載

このタイムラインの文章は、実はBASの公式ステートメントにも全く同じ文章で掲載されている。国内外での報道がプレスリリースやステートメント(声明)に基づくものならば、この文脈で語られないのは不自然である。

  Safer nuclear reactor designs need to be developed and built, and more stringent oversight, training, and attention are needed to prevent future disasters.より安全な原子炉が設計及び建造されなければならない。また、将来の災害を防ぐために、より厳格な監督、訓練が行われ、かつ十分な注意が払われる必要がある A major question to be addressed is:  How can complex systems like nuclear power stations be made less susceptible to accidents and errors in judgment?(原子力発電所のような複雑なシステムを事故や判断ミスに左右されないものとするには、どうすべきかという重大な課題に取り組む必要がある。
さらに、その前段の文章では、このようなことが述べられている。
ここでは、まさに名指しで、「フクシマ原発災害」の持つ重大な意味を訴えている。

In light of over 60 years of improving reactor designs and developing nuclear fission for safer power production, it is disheartening that the world has suffered another calamitous accident. (過去60年以上に渡って、安全な電力生産を目指して、原子炉設計の改善を行い、核分裂開発を行ってきた努力を鑑みるに、世界が再び悲惨な事故の被害に遭ったことは落胆を禁じえない。)Given this history, the Fukushima disaster raised significant questions that the Bulletin of the Atomic Scientists' Science and Security Board believe must be addressed.( このような歴史を踏まえ、フクシマの災害は重大な課題を提示していると、原子力科学者会報及び安全科学技術理事会考える。 

つまり、BASの科学者たちは過去60年の原発開発の歴史を振り返ってみても、フクシマの原発災害は人類社会に重大な課題を突きつけていると、明確に指摘しているのである。これが、日本に関わる声明の全内容である。

それ以外の理由について、タイムラインは以下のようにまとめている。


2012Political processes seem wholly inadequate(政治的なプロセスがまったく不十分である); the potential for nuclear weapons use in regional conflicts in the Middle East, Northeast Asia, and South Asia are alarming(中東、北東アジア、及び南アジアの地域紛争における核兵器使用の可能性に警戒する必要がある); the pace of technological solutions to address climate change may not be adequate to meet the hardships that large-scale disruption of the climate portends.(気候変動に対する技術的解決策の開発のペースは、気候変動の前兆となる大規模な混乱がもたらす困難を打開するには不十分と見られる。)

最後に

今回BASの科学者たちが午前零時5分前に1分秒針を進めた理由は、次の4つである

  1. (核不拡散の予防に関する)政治プロセスが不十分であること。
  2. 地域紛争における核兵器使用の可能性に警戒しなければらないこと。
  3. 気候変動に関する技術的解決策の開発が問題に追いついていないこと。
  4. 既存の原子炉の設計の安全性が不十分で、またその管理・監督・訓練が十分でないこと。
日本人にとって重大な関心事であるこのニュースを報道するに当たっては、こうした背景までしっかりと把握した上で正確な報道を心がける姿勢が肝要であると思う。今日を生きる日本人にとって、今ほど、このことが他人事に感じられない時はないのだから。(了)



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