推論: アイェレット・シャーケッド議員の記事は、深刻な結果を招いていたかもしれない。
イスラエル極右政党のアイェレット・シャーケッド議員。今回の「パレスチナの母親皆殺し」記事は、単にジェノサイド罪に値する暴言であるだけでなく、より深刻な結果を招いていたかもしれない。 ↓
http://t.co/yOKNOl93On via @dailysabah
今回の #ガザ 空爆に至る詳細な経緯は把握していないのだが、大阪の人民日報という民間報道機関(?)が、在イスラエル日本人女性の記事として詳しく経緯をまとめていた。 http://t.co/Al42U5QMGD
大阪人民日報によると、今回の #ガザ 空爆はイスラエル少年三名の拉致誘拐・殺害が直接の原因だとされている。イスラエル側はハマスの犯行と断定し、ハマスは否定したが構わず攻撃を始めたと。ハマスは拉致誘拐については必ず犯行声明を出すらしく、今回はそれがなかったとのこと。
また大阪人民日報は、そもそもイスラエル少年三名が拉致誘拐されたのは、五月にパレスチナの少年が彼ら三人に殺害されたことの報復だとされており、イスラエル政府はそれをハマスの犯行だと独断で断定したとのことなのだが、Daily Sabah紙は7月2日に起きた殺人事件が発端だとしている。
Daily Sabahによると、問題となっている極右政党「ユダヤの家」のシャーケッド議員の投稿は、イスラエル兵士を含む少年六名により、一人のパレスチナ少年が暴行され焼き殺される一日前にポストされたという。記事にはないが、イスラエル少年三名の拉致誘拐はその報復なのではないだろうか。
こうして限られた情報を辿っていくと、ある恐ろしい推論に辿り着く。現在、遂に地上戦にまで至った #ガザ 攻撃は、イスラエルの人気政治家シャーケッド議員のジェノサイドを扇動するポストに触発された数名のイスラエル人少年らの蛮行に端を発しているのではないか、という推論だ。
さて、当のシャーケッド議員は、7月1日に投稿され問題報道後の15日再編集されたポストに書かれている内容は、自らの言葉ではなく引用だとしている。たしかにそのことは、報道の元になったDaily Beastの著者も認めている。 http://t.co/T48zeaCqHG
ジャーナリスト議員はDaily Beastの記事は捏造と反論する16日のJewish Pressに対する独占寄稿記事で、必死の弁解を展開する。 http://t.co/QwcHFUq2xr
だが、百歩譲って彼女の主張が事実だとしても、問題の引用があったのは事実である。
ここで更に百歩譲って、シャーケッド議員が引用した記事は実在するとする。問題はどういう文脈と意図で、その記事が引用されたかであり、議員自身がどう思っているからだろう。残念ながら、反論記事の説明は中途半端で精彩を欠いた。さらに、投稿が再編集されている事実もある。
トルコのエルドガン首相をして「ヒトラーのような発言だ」と批判された問題の"引用"について、議員は短く、引用元の要旨は「戦争において一方の勢力が市民を攻撃した場合、その勢力は自らの市民について特別な待遇を受ける資格を失う」 だったと説明した。依然、国際法違反である。
ガザ攻撃に関する情報は錯綜し過ぎていて、今回の事態の発展経緯の真相はようとしてしれない。だが若者に絶大な人気を誇る現役の議員がジェノサイドを扇動・正当化するような投稿を行ったことは覆しようのない事実である。
私のこの推論が誤りだとしても、この議員の重大な過失は問題視されるべきである。
おわりに
法の悪用で文民への攻撃を正当化することの悪辣さ
国際人道法上、文民は自ら武器を持って戦闘に加わらないかぎりは非戦闘員とみなされ、法の庇護に置かれる。紛争の当事者はこれを尊重し、極力文民を戦闘行為から保護しなければならない。
ネタニヤフ首相の元側近が、今から12年前に、シャーケッド議員が引用したように述べていたのだとすれば、それは国際法上の認識が乏しいと言わざるを得ず、またその誤認を鵜呑みにして文民への攻撃を正当化する議員の考え方は危険極まりない。
議員自身の主張については、原文がヘブライ語で書かれているため機械翻訳した程度ではその意図を正確には把握できないのだが、自身が心酔する人物が文民への攻撃を正当化した未公表の文章を引用した背景には、自らの主張を正当化、あるいは少なくとも補強する狙いがあったのだろうと容易に類推できる。
文民への攻撃を正当化し、敵を根絶やしにするために、自らの手を血に染めて、文民の母親をもその家ごと破壊してしまっても構わないという発想は、単に部族同士の憎しみから相手部族を殲滅しようとしたあのルワンダ大虐殺をも凌駕する。法を悪用しているからである。
ルワンダ大虐殺では、法は不在だった。殺戮に関わった多くの一般市民は、国際法など知らなかった。当時、国際刑事裁判所ローマ規程は存在しなかったが、ジェノサイドはジェノサイド禁止条約として国際強行規範に触れる犯罪として既に当時認識されていた。
ルワンダのこの無法状態の中で起きた虐殺と、法の悪用(錯誤)の上に成り立つ現在のイスラエルのガザ攻撃ではどちらがより悪辣なのか。あまつさえこの議員は、法を悪用して文民への攻撃を正当化している。当然イスラエル兵は、国際法上の軍隊として遵守する義務がある。
やはり、もう他人事ではない。
何万人ものフォロワのいるこの有名人若手議員(まだ若干38歳で二児の母だという)が、イスラエルの若者層に及ぼす影響は大きいだろう。その議員が、たとえ引用であったとしても、大量虐殺を正当化・扇動するような投稿を行い、その直後に、一連の暴力の連鎖が起きているということが現在判明している時系列の事実なのである。
いかなる背景があろうと、たとえ自らの言葉ではなく引用でしかなくても、自らの影響力を十分に把握する議員が、結果的に現行の国際法上犯罪行為とされる「扇動」行為を行ったことは許しがたい。これが日本の国会議員だったらと思うと、身震いがする思いである。
しかし、日本の一般的な国会議員の国際法に関する知見は、このイスラエルの極右系議員とそう大差がない。これは、これまでの運動の実体験として把握している。そう考えると、やはり今回のことは「他人事」とは到底思えないのである。
そういう意味で、閣議決定により広範な武力行使が可能となった現在、今回の重大な発言の深刻さと、そのことが孕む危険性の大きさは、私たち日本人にとって、十分将来起こり得る蓋然性の高さを認識させる事件だったといえる。
昨今、現実的にみられる日本の地方・中央政治の倫理・道徳の乱れは、私たち市民に、より一層の政治監視が必要であることを警告している。シャーケッド議員のように非見識で、かつ、悪辣な扇動家が、日本から現れるようなことはあってはならない。
だが既に、その兆候は各地にみられる。
私たちはこれを阻止しなければならない。
日本国民の名誉にかけて。