日本再武装(Rearming Japan)
製作・監督:Calvin
Sims、Matthew Orr
公開:2007年7月
公開:2007年7月
第1章
専守防衛の見直し
日本の平和憲法は戦争を放棄し、国家が本格的な戦力を持つことを
禁止している。だが保守派の政治家たちは、これを変えようとしている。
外務副報道官 谷口智彦:「北朝鮮は核兵器の開発を公言しており、そのミサイルは日本列島を標的としていることが明らかとなっている。さらに、中国の軍事拡張が事態に揺さぶりをかけている」
衆議院議員 加藤紘一:「政治的、国際的、軍事的に中国は拡張している。我々は中国に対し独立を保たねばならない」
第二次世界大戦の敗戦以来、日本は平和国家であった。軍事的な攻撃を放棄し、軍備を自衛にとどめた。60年以上前の終戦以来、日本の軍人が戦死したことも、戦争で殺害をしたことがない。
冷戦が終わり、中国や北朝鮮との紛争の脅威が高まるにつれて、日本は平和主義を捨て再軍備を目指している。
プルトニウム爆弾の製造設備を停止すると合意した北朝鮮は、すでに少数の核兵器を開発したとみなされ、依然として脅威である。
東京都知事 石原慎太郎:「日本は自衛のために独自の判断が必要だ。そのためには多くの人が恐れる核兵器の入手に向かう可能性がある」
この変化は、日本を消極的な戦争法制から遠ざけようとする保守派の運動の一部である。右翼政治家は日本の軍国時代を賛美し、帝国軍が犯した犯罪を覆い隠すために過去の歴史を書き換えようとしている。
その目的は、日本人に国に対する誇りを植え付け、日本が世界に果たす役割を大きくすることである。こうした変化は、日本の軍事占領下で悲惨な目にあった近隣のアジア諸国を、日本があの激しい帝国主義に舞い戻るのではないかという不安におとしいれている。
広島市立大学教授 田中利幸:「政治家が誤った方向へ進めば、ナショナリズムが盛り上がるだろう。もし軍国主義と一緒になれば、我々はどこへ行くかわからない。中国を攻撃するかもしれない。」
シマモトマサヤ氏は、日本でもっとも大きな右翼団体の一員である。彼のグループは、毎週東京の路上でナショナリズムを吹聴している。
右翼活動家 シマモトマサヤ:「日本の憲法は世界で最もばかげたものだ。陸海空の戦力の保持を禁止し、攻撃の権利を奪っている」
右翼のお題目の最優先課題は、日本の戦争犯罪の防止のために第二次大戦の終わりに米軍に押し付けられた、憲法9条の改定である。9条の元で、日本はその領土の外で活動できない自衛隊に限られている。
シマモトマサヤ:「我々は9条を廃止し、自衛隊を国民の生命・自由・財産を守る真の日本軍にしなければならない。」
これは日本でますます力を得ているメッセージである。日本は戦争の廃墟から立ち上がり、世界第2の経済大国になった。豊かさを得た日本は自分探しをしている。おそらくは軍事的な力として、国際問題により大きな役割を果たし、中国やインドが成長する中でその経済的地位を維持したいと考えている。
田中利幸教授:「中国はもうすぐアジアで最も強大な国になるだろう。それはもちろん、日本の政治家-特に右翼政治家のプライドを傷つけ、彼らの軍事力増強への欲望を刺激するだろう」
憲法改正を目指す役割を担っているのは安倍晋三首相であり、彼の政府は9条の廃止に向けて動いている。
谷口智彦副報道官:「なぜ安倍首相の年代が憲法改正に意欲的かというと、それは日本が成熟し、米国とともに世界を管理していくことでよい方向に変えていけるからである」
石原慎太郎都知事:「日本は軍備を持つべきであり、ある程度は現在でも有している。しかしそれは完全なものにならなければならない。われわれは経済的・技術的な力を持っている。われわれはアメリカの手下ではない。」
最近の世論調査では、回答者のわずか3分の1が9条改正に好意的であった。憲法改正に批判的な人々は、それは右翼政治家が高い失業率や犯罪増加への不安などの国内問題から目をそらせるためだという。
加藤紘一議員:「城の中の一体感は敵の攻撃を受けると高まる。だから、人々を結束させるには敵を作ることだ」
元沖縄県知事 参議院議員 太田昌秀:「憲法が変えられたら、多くの恐ろしいことがおきる恐れがある。より多くの兵士を求めて、昔のように徴兵令が作られるかもしれない。私が今心配しているのはこのことだ」
第二次大戦の特攻パイロットであったマツウラ・キイチ氏は、憲法改正を求める政治家は、彼やその仲間を死に追いやった軍事指導者と同じだと言う。
マツウラ・キイチ:「愛国心を掲げ、9条を帰るべきだという政治家に言いたい。あなた方は国のために自殺し、犠牲になる覚悟はありますか?と」
1945年、マツウラ氏は最初で最後の特攻のために沖縄に向かったが、悪天候のため基地に引き返さざるを得なかった。しかし、その他数百名の特攻隊員は死亡した。
マツウラ・キイチ:「そう、私の仲間は死んだ。そして私は未来に対して責任を感じている。戦後すぐは、生活のためにその日その日を生きるしかなかった。70歳になったとき、私は自分のなすべきことが戦争被害者を尊ぶこと、そして彼らの死が無駄にしないためにどのように意味をもたせるかと言うことに気づいたのだ」
その憲法上の制約にもかかわらず、日本はすでに自衛隊をアジアでも有数の軍隊に作り上げた。日本の年間軍事予算は400億ドルであり、米に次ぐ世界第2である。
その軍備の規模と洗練度は英国に匹敵する。何百人もの日本の兵士がイラク南部やツナミ支援のために東南アジアに派兵された。
谷口智彦副報道官:「過去10年を振り返ると、とくに9-11後、日本軍はイラク国民の幸せに貢献してきた。人々は『我々はよいことをしているし、我々の軍隊、すなわち自衛隊はもっと貢献できる』と言い始めている」
しかし、右翼政治家は平和活動よりさらに進もうとしている。日本の政治家は不可能を可能にしようと考え出している。
唯一の被爆国は、核兵器を手にすることを真剣に検討しているのだ。
太田昌秀議員:「米国の軍事専門家や学者のなかには、2015年までに日本は核兵器をもつだろうと言うものもいる。なぜなら、2015年までには中国は兵士として戦える若者が大勢いるのに対して、日本は少数しかいないからだ」
田中利幸教授:「右翼の立場から言うと、『核兵器で被害を受けたからこそ、我々も持たねばならない。』もし北朝鮮が我々にミサイルを発射するようなら、北朝鮮は世界中から攻撃を受けるだろう。だから、私は核兵器を持つことが北朝鮮や中国との問題解決になるとは思わない」
(第1章の終わり)
第2章
歴史的健忘症
日本の右翼政治家は、戦時の残虐行為を軽んじ、戦争博物館を建設したり教科書を
改訂することなどにより、かつての日本の軍国主義を美化していると批判されている。
被爆者、広島平和文化協会 タカハシアキヒロ:「私の名前はタカハシアキヒロで、75歳です。日本の政治家はますます核兵器を支持するようになっています。生存者として、私はとても心配しています。日本は過去の戦争を反省すべきです」
広島平和記念館訪問者 エンドウタツヒロ:「ここでおきたことに対する恐怖を感じました。こういうことを教えられてこなかった世代です。だから自分の目で見なくては」
広島は、各時代の「グランドゼロ」として世界中で知られている。1945年8月6日、米国はまさにここで世界初の原爆を落としたのだ。14万人を越える人々が死亡し、多くは即座に蒸発した。3日後、2発目が長崎に落とされ日本は降伏し、第2次大戦は終結した。
広島平和公園と記念館は原爆被害者を記念するためと、核兵器への抑止力となるために建てられた。日本人にとって、広島は日本のアジアでの帝国主義に対する反省としての役割も果たしてきた。
エンドウタツヒロ:「一番衝撃的なのは原爆前の広島と直後を比べたジオラマです。このような悲惨なことが2度と世界が体験することがないよう、望みます」
広島平和記念館副館長 クニシゲトシヒコ:「ここは、恐怖の出来事に関心を集めるため、原爆の10年後に開館しました。我々は核兵器の廃絶を目指しています」
何十年にもわたって、広島平和公園はしばしば学校見学で用いられてきた。若者にとって、自分の国がかつて重大な被害をもたらし、またもたらされたこの第2次大戦を評価するのは難しい。日本の教科書は、こうした課題について正直に取り扱っているとはいえない。
広島市立大学教授 田中利幸:「1980年代半ばから、政府は学校で愛国心を高める政策を取り入れ始めた。さらに、公立学校で平和教育を抑える政策を取り入れた。たとえば、ここ広島では公立学校の先生は1年に数時間以上平和教育に使うことができない。こうした政策は、日本の平和憲法を変えて戦争のできる国に徐々に変えるための政府の計画の一部だ」
広島から遠くない呉市では、平和を推進すると言う新たな記念館が開館し、多くの観光客や学生を集めている。しかしここには大きな違いがある。この大和博物館は米機によって沈没し、何千もの兵士が死亡した伝説的な軍艦を記念するものである。
72000トンの大和は、最大級の軍艦で帝国海軍の誇りだった。これは軍国主義を賛美し、国の誇りを高め過去の戦争犯罪の記憶を消し去ろうとする右翼活動の一部だとの批判もある。
田中利幸:「戦艦大和博物館は、政府の長年にわたる愛国心教育とつながりがある。世界のリーダーとみなされるためには、日本を栄光あるものにしなければならないと考えているのだ」
2005年の開館以来、大和博物館は人気の観光名所となった。
大和博物館にきたヤスイタカオ:「戦争体験がないので、すばらしいです。知らないことを学ぶことができます」
大和博物館にきたマエダマサコ:「大和に乗っていた若者は、どんなに絶望的な状況かも知らず日本が勝つと思っていました。今の日本の若者は、彼らに比べ軟弱で甘ったれています。彼らに学ぶべきです」
大和博物館にきたフカイタイセイ:「大和のモデルはかっこいいし、展示もわかりやすい。大和を作った人はすごい。沈んじゃって残念です」
タカハシアキヒロ: 「呉の大和博物館だが、なぜあんなものを作ったのかわからない。若者がたくさん行っている。大和は戦争時代の遺物で、ただの廃墟だ。あの軍艦をなぜ取り上げたのかわからない」
なぜ日本人の多くが戦争のことをほとんど知らないか、これは政府公認の教科書がますます軍国主義的な過去の記述を消し去っているからだ、と言う批判がある。中国での「南京大虐殺」や日本軍の慰安婦制度などの犯罪は、書き換えられるか無視されるかである。
田中利幸:「歴史を教わっていないため、戦争や平和について真剣に勉強する機会がない。これは危険なことだ。何も知らないと、政治家に『ほらこれが正しい考えだ』と言われると、ついていってしまう」
谷口智彦:「自民党の保守政治家の中には、教科書の記述の一部の書き替えを主張するグループがある。しかし、安倍首相はただの国会議員ではない。彼は教科書の記述や著者について何か言う立場にはいない」
日本はアジア諸国を侵略したのではなく、西洋列強から開放したと言う教科書まである。
太田昌秀:「日米が戦争したと言うことすら知らない若者は、簡単に洗脳されてしまう。彼らが我々と同じ間違いを犯す恐れがある。我々年配者がそうだった」
(第2章の終わり)
第3章
悪夢の再来
愛国心を植え付け、日本の国際影響力を高めたいという野望が、日本で勃興しつつある
ナショナリズムの推進力となっている。日本は、過去の過ちを繰り返す道を選択するのであろうか。
軍事による富国を目指す日本。
右翼的な愛国主義を奨励する日本。
かつての残虐性を否定する日本。
そして、核兵器に揺れる日本。
果たして日本は、過去の過ちを繰り返してしまうのだろうか。
広島市立大学教授 田中利幸:「核アレルギーは、依然として強いので、核に関する日本の人々の考えを変えるのにはまだ少し時間がかかるだろう。しかし心配なのは、若者たちがその意識の存在を忘れてしまうことだ」
最近、東京早大の社会学部の学生たちが、日本における政治的動向について教授を囲んで語り合った。
教授:「日本は核武装するべきだと思いますか」
早稲田の学生 リー・ジンヒー:「米追従をやめたいなら、核を持つべきかもしれません。日本には軍隊が必要だと思います」
早稲田の学生 カワゾエサオリ:「核武装をするとしたら、それはとても残念な選択ですが、北朝鮮に脅威に対する一つの解決策かもしれません。でも決して、望ましいことではなく、また残念な選択だとは思います」
早稲田の学生 カノウユウスケ:「核兵器の廃絶を定めた日本国憲法を誇りに思うべきです。なぜなら、日本は世界で唯一の被爆国だからです」
外務副報道官 谷口智彦:「多くの議論が行われており、さまざまな意見が交わされている。しかし、端的に言えば、日本語を話さない人には、日本がどの方向に向かっているのか、どのような議論がされているのか、あるいはされていないのかさえ把握するのが非常に難しい。『Sunshine is the best disinfectant』(公明正大こそが最高の信頼の証)という言葉があるが、これはここでも当てはまる。まず、議論を行っていることを世界に知らしめなければいけない。そうすれば、アジア諸国を含む世界全体が、日本の進もうとしている方向を安心して見守れるようになるだろう」
広島市立大学教授 田中利幸:「日本人が中国人に対して残虐行為を働いたという事実に疑いの余地は無い。我々が、中国人を含む何万もの人々を殺害したことも疑いの余地は無い。我々が政府ではなく、個人に対して支払う責任があることも疑いの余地は無い。我々はこれらの問題と向き合い、適切に対処しなければならない。さもなければ、我々はいつまでもこの問題に苛まれることになる」
(本編の終わり)
翻訳:2007年7月28日
Transcription
by:
Stiffmuscle,
GivingTree
Translation
by:
おこじょ、GivingTree
Adapted
by:
Exod-US
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