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2015/02/02

【緊急コラム】邦人人質全員死亡事件: 政府の反省・責任は?どうやって責任を問う? #IamNotAbe #IamKenji

自衛隊の活用 首相が意欲 現実味薄く、自民も慎重

ハコモノ行政マインドを脱せよ

東京新聞(1日)
だからさ、自衛隊の能力云々じゃないんだよ。今回の件だって、ヨルダンは特殊部隊を派遣することができたわけだ。 それをずっとしてこなかった。なぜだと思う? いくら普通の国でも対象国の了解と協力なしに地上部隊を派遣することなんてできないんだよ。 その外交力が日本政府にあるか?
アルジェリア人質事件を教訓に 日本政府は 日本版国家安全保障会議を作った。それが今回の何の役に立った? どう司令塔の役割を果たしたというのだ。 ヨルダン政府に対して戦略的に日本の要求を通すことができたか?できなかったろうに。 文民政府の人の質に問題があるんだよ。
いくら強行的に実力を行使する手段を持っていても、 それを指揮する文民側が危機管理能力も、緊急対処能力も、交渉力もろくに持ち合わせていない状態では、 宝の持ち腐れにすぎないんだよ。 即応部隊は政治家の点数稼ぎのための道具じゃないんだよ。具体的な戦略あって初めて機能するんだよ。
在外公館の強化は麻生政権の時代から自民党はやってきたんだよ。 それでも形だけの数合わせの強化で結局のところ 情報収集能力は向上してない。 今回のような事件でまず鍵となるのは 情報処理能力だろうに。現地のインテルが確実だからこそ部隊が有効に機能する。その"お膳立て"が必要となる。
このお膳立てを行うには 地元に根ざしたヒューミントのネットワークが必要。 在外公館の警護能力を強化すればいい話ではない。まさに地道な地に根を下ろした活動が必要。その殆どは非軍事。即応能力があっても使える環境を整備しなければならない。その能力が決定的に無いことが今回判明した。
軍事対応や軍事力を見せつけることが敵への有効な抑止力となると思ったら大間違いだ。 そんなんだったら中東の「普通」の国々は今頃イスラム国を壊滅させている。人質交渉だって長引かせない。問われるべきは指揮をとる文民政府の能力で部隊の即応力ではない。国会議員はこれを踏まえて議論せよ。
対応のオプションを拡げるのは賢明な措置ではある。だが、状況に対して有効なオプションであるかを判断する能力が指揮する側に必要になる。これは指揮統制する側に訓練とプロトコルの確立が必要だということだ。日本版NSCは全く役立たずな代物だった。まずはその反省に立つ必要がある。 
「私たちが今、やらなければならないのは、イスラム国へのヒステリーを起こす事ではない。この間、政府がどんな交渉をしていたか、安倍政権がどんな意図でどう動いたかをきっちり検証することだ。」田部祥太

交渉を妨害し後藤さんを見殺し! イスラム国事件で安倍政権が犯した3つの罪

邦人二名死亡の最大の責任は政府にある

リテラ(2日)
昨晩は激しい憤りに任せて政府の怠慢を書きなぐってしまったが、今朝リテラの記事を読んで平静を取戻し、あらためて今回の悲劇の最大の要因が日本政府の失策にあることを確信した。犯罪者集団に実行の責任があるのは当然だが、問題は犯罪者にどう当局が対応したかにあるからだ。
通常の国内の誘拐事件でもそうだが、警察が明らかに尽力していることがわかれば批判は少なく評価が高くなる。今回の事件は、政府が火種を撒きつつ、自らの失策を挽回するに足る体制も方策もなかった。13年に日本版NSCを造り豪語したのにも関わらずだ。
国民二人も自らの失策により死なせておいて、それで「自衛隊が派遣できれば」という論理のすり替えを行うとは、それこそ『言語道断』である。私はこんな狂ったロジックで失策の責任も言明せず、経緯の検証も反省もせずに安易に実力行使一辺倒を宣う政権には”屈しない”。
「NSCはできて1年も経たないのだから期待し過ぎるのは筋違い」という主張も聞かれるが、構想に20年近くかけ、07年にも一度設立しかけているのだからそれなりの働きをすると期待して当然だろう。まして、邦人人質事件が教訓となって設立されたのだから猶更だ。
リテラによれば、安倍政権の犯した第一の失策は、対策本部をヨルダンに置き、ヨルダンを拠点に邦人救出を試みたことだという。これは合点がいく。ヨルダンは有志国連合の空爆に直接参加する数少ない中東三か国でISISからすれば仇敵なのだから。
しかもヨルダンは、邦人2名が捕まるはるか以前からパイロット解放の交渉をずっと行ってきていた。そこに付け込み、利用されるという不遇をヨルダンの人々にもたらしたのだから、まったく迷惑極まりない判断だ。この判断を行ったのがNSCなのである。
07年時にの20人規模よりも増強されて70人体制で発足し、安保PRで頼もしい礒崎安全保障担当首相補佐官を政治任用側のトップに、外務省の帝王の谷内元事務次官を据えたNSCは初の邦人人質事件で致命的な選択ミスを行ったのである。
結果的に日本政府はヨルダン国民に偽りの希望を与え、この機にパイロットの解放を公言したヨルダン国王に恥をかかせたことになる。これは後に、外交儀礼による謝意とは関係ないところで亀裂として表面化することだろう。そこも、ISISにしてやられた。
230億円という法外な身代金を要求したのも、ヨルダンに収監される死刑囚との交換を要求したのも、実現不可能と分かっていてのこと。真の目的は有志国連合に揺さぶりをかけることだった。新参者の日本はもとより、空爆に参加するヨルダンを揺さぶることが目的だった。
身代金支払いも捕虜交換も、米英のノーコンセッション方針に従えばどのみち実現薄だった。ところが、ヨルダン側は犯人側の真意を確かめるために死刑囚の解放を実現しようとした。ヨルダンは米英のくびきを離れ自己判断した。同盟関係にくさびが打ち込まれたのである。
ところがISIS側はもとより切り札のパイロットを解放するつもりはなかった(更に、既に死亡している可能性もあった)。結果としてパイロットの生存が確認できず、ヨルダンとの交渉は決裂し、故・後藤氏の解放は実現しなかった。日本・ヨルダン両国がISIS側に完全にしてやられた瞬間だった。
我が国は、安倍首相の陣頭指揮の下、テロに屈しないどころか、テロに完全に翻弄されてしまったのである。政府の初動のまずさのおかげで、人質解放の条件が劣化し、他国を巻き込むことになり、そして国民二名を死亡させたのである。
ないものねだりでハコモノ行政を展開した結果が、これである。国民2名の死亡と、テロとの戦いの同盟国との関係悪化である。今後、ヨルダンが日本の支援を受け続けるかどうかが、そのひとつの証明となる。国外の報道にアンテナを張ることだ。
外交判断は、当たり障りのない外交儀礼とは異なるところで冷徹に行われる。パイロット解放交渉の日本政府を挟んだ故のとん挫は、今後のヨルダンとの外交関係に間違いなく暗い影を落とすだろう。ヨルダンの有志国撤退もあり得る。かつてフィリピンがイラクでこれを行った。
またヨルダンだけでなく、他の有志国の間でも日本政府の評価は(外交儀礼による称賛とは異なり)地に落ちているだろう。13年のアルジェリア事件に加え、邦人人質殺害はこれで2件目。短期間に失態を繰り返し、その改善が全く見られていないのだから。
今回の事件により、日本の有志国連合の中でのポジションはかなり劣化し、ジュニアパートナー扱いを免れなくなるだろう。事実、日本政府は有志国連合に対する後方支援をしないと公言してしまった。これは参加する前に「いち抜けました」と表明するようなものである。
また情報の取扱についても、今回日本政府はその能力の危うさを露呈してしまった。ヨルダン政府とISISとの交渉が大詰めに入っていた時に、現地対策本部の責任者が「こう着状態にある」と交渉の状況を漏らしてしまったのである。これには流石に国際社会も呆れただろう。
これまで各国の交渉に関する発表内容を見ていても、言葉巧みに情報の露出を控えていることがわかる。状況が分かるような言葉は口にせず、逆に相手にゆさぶりをかけるようなハッタリもかます。そうして裏表を使い分けて交渉を有利に進めようとする。
ところが日本政府の当事者は、交渉の当事者でないせいかこの緊迫感が全くなく、つい「こう着状態にある」等と国際メディアに漏らしてしまう体たらく。秘密保護法があっても発表の場で情報を的確に扱えないのでは危なっかしくてしょうがない。日本の信頼失墜はもはや自明だろう。

政府責任をどう検証するか

対テロ戦”再”参戦を目論んで政権発足早々に制定された特定秘密保護法だが、これから国会審議等で威力を発する可能性がある。既に予算委審議でも「つまびらかには話せない」という表現が使われていると思うが、これは"外交上の機微"に触れる程度の情報である。
米上院外交委員会ならばここで秘密公聴会を開いていわば外交施策の失態に関する”査問”が行われる。リビア大使襲撃事件でペトレイアス元NATO司令官が査問されたように。NSCの人間が査問にかけられて然りである。それが責任履行アカウンタビリティーである。
国会の通常審議では「つまびらかには話せない」程度の表現で済むが、”外交安保上の機密”に触れるものとなれば、それは「国家安全保障上の問題で話せない」と述べることになる。そのベースとなるのが、特定秘密保護法である。
だが仮に、秘密保護法に触れるような問題であっても、それを国会が審査しないのでは意味がないし、三権の相互監視が成り立たない。国会には審査権があり、これを適用するにはまず秘密公聴会を与野党合意で開く必要がある。
安保法制や自衛隊派遣論議の前に、まず国民二名を死亡させた政府の責任を問う特別審議が国会でなされて然りなのである。常任委員会の委員長は全て与党が握っているので、特別委員会は野党が議長を務める体制にする必要がある。
野党は責任追及のための特別委員会の設置を提案するべきであり、通常の予算委員会等総理が出席する委員会では外交上の機微の問題だけで逃げられ、厳秘事項については秘密保護法で逃げられるので、”逃げられない場”の構築が必要である。
この検証では残念ながら全ての事実は国民には明らかにならないが、せめて国会内で十分に時間をかけて審議し、与野党がその内容に合意し、外に漏らさないことを保証できる。アメリカの秘密法制を模倣するなら、そうした枠組みも模倣してほしいものだ。形だけ真似ても意味がない。
与党が全ての情報を握り政府とツーカーで、国会に正当な審査を認めないのならば国会など不要である。与党の責任を問うために特別な場が必要なら、それを与野党合意のもとつくればよい。それが政治の行える本件の検証作業だ。何もかも公開で議論すればよい訳ではない。
そして、機密に触れない範囲の情報は適切に国民に開示する必要がある。それこそ、911検証委員会のようにである。福島原発事故後に国会で行った調査も、一般刊行物として出版された。同等レベルの情報開示、即ち透明性の確保が、秘密法制の健全な運用には不可欠である。
二人の邦人の命が失われたシリア邦人人質殺害事件の事後処理については、開示できる情報は開示し、整理し、検証し、そうして初めて、その反省から改善が促されなければならない。政府はもとより国会でもこの議論は十分になされていない。
そのような中で、自衛隊派遣や安保法制絡みの議論が先行するのは時期尚早である。国会議員は、国家の重大事案の後始末について、国としてどうすべきか、どう再発を防ぐべきかを慎重かつ綿密に検討し、結果を適切に開示する必要がある。
それが、二名の国民の尊い命を奪い、国際テロリスト組織にその利用価値をあらためて認知させた結果、全世界で不用意に安全を脅かされることとなった国民に対し、政治に携わる全ての者が課された最低限の説明責任である。

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