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2015/02/03

【緊急コラム】邦人人質全員死亡事件: 政府にはどのような責任があるのか #IamNotAbe #IamKenji

大本営発表ここに極まる(3日の読売)
政府にはどのような責任があるのか


2日付けのリテラも挙げていた政府の明白な責任は3つある。

両人質拘束後、官邸が解放に向けて本気で動こうとしなかったこと
交渉の窓口をトルコではなく、ヨルダンとしたこと
中東歴訪でぶちあげた2億ドル支援だ

第一に、①14年8月・10月以降人質解放交渉に真摯に取り組まずに今年1月まで放置してきたこと。第二に、②15年1月以降の解放交渉を自ら行わずまた妥協もせずに他国(よりによってヨルダン)に丸投げしたこと。第三に、③解放交渉中にあからさまに犯人勢力を刺激する言動をとったこと。

①はまず『言語道断』だが、解放交渉中に解散総選挙を行うというのはもはや常軌を逸していると言わざるを得ない。自国民の保護は国家の第一義の義務である。NSCの陣頭指揮を執ってことの迅速な解決に当たらなければならない首相が自らも選挙に出馬し遊説に回っていたのである。その間何ができたのか政府首脳部の怠慢の検証が必要だろう。

②「両名を殺害する」と、犯人グループにより明白に国民に危害を与える表明がなされていたにも関わらず、ただ「テロには屈しない」の一点張りで何の譲歩もせず、交渉もせず、まず人質一名を死に至らしめた。この過程で政府が行ったことは、交渉・妥協をしないで他国(よりによってヨルダン)に汚れ役を任せる。それのみである。

任せられた王国ヨルダンはさぞ困惑したことだろう。すでに同国はISISと死刑囚の解放について12月から交渉を行ってきていたからだ。そこに、国民が望む英雄との交換ではなく、単に経済支援国であるという理由だけで義理のある日本の人質と交換するという条件を突きつけられたのである。結果、ヨルダンはパイロットの交換を優先し、交渉はISISの目論見通り決裂した。

これで仮に、日本の行動の結果、パイロットが殺害されていたとしたら、日本政府はどのようにして責任をとるつもりだろうか。解放を訴えるデモを起こしている百数名のパイロットの親族にどう申し開きするのだろうか?

大いなる禍根を残したと言わざるをえまい。
もちろん、多大な援助をもらっている手前公に批判はしない。

③水面下で外務省が交渉を行っているなかで、官邸側はそれを知りながらその動きを全く無視し、外務省の警告も無視して独自のアジェンダで中東外遊を企画・指図し結果的にテログループに要求を表面化させる絶好の機会を与え、既存の人質二名を危険に晒した。

その結果テログループに演説の言質をとられる始末で、演説で表明した金額そのままを身代金に要求された。230億円という法外な金額は、どの国家も支払きれないし、支払わないだろう。そのことは既に前提にあって。その上で何をなすべきか政府は検討するべきだった。


 幻の軍事オプション

しかし軍事オプションは初めからなかった。仮に自衛隊に邦人救出任務が付加され超法規的に許可されたとしても、他国における軍事行動は憲法以前に国連憲章により厳に禁じられる。シリア政府から①許可あるいは②要請されるか、③国連安保理決議により集団安全保障措置として当該行動が明示的に許可されていない限り、仮に国内法制が整備できていても自衛隊を派遣するオプションはなかったのである。

有志国連合軍が成立している背景には、そもそもシリアに対する軍事作戦が中露の反対により国連授権の活動として容認されていないからだ。即ち、安保理に許可された行動としての軍事行動ではないため、日本は国連中心主義を掲げる現行の法体系では参加しようがないのである。かといって、敵対するシリア政府から要請を受けられるわけもない。単独軍事オプションは、はじめから「あり得ない選択肢」だったのえである。つまり、他国(有志国連合軍)に救出を要請するほかなかった。しかし、日本政府がこのオプションを検討した様子はない。

つまり、身代金は払わない(これは○)、交渉はしない(これは×)、他国要請を含む軍事オプションをとらない(これは△)ことで、実質的に政府は『何も』しなかったも同然なのである。

その上で、カイロで人道支援目的とはいえ「イスラム国と対峙する国」に対する支援として、巨額の支援を表明し、また訪問先のイスラエルでイスラエルの国旗の側に立つパフォーマンスを行い、あからさまにISISに対する敵を丸出しにした。自国民の解放で交渉中の一国の首相が、である。


 政府のいう『苦渋の選択』のレベル

国際的なすう勢を鑑みて、対テロ戦への参戦を一刻も早く表明し国際連帯の輪の中に入らければならなかった、という国益が絡んでの判断だということはわかる。しかし、それをするにもタイミングがあった。しかも、ただ連帯を表明するよりも一歩踏み込み、明確に米英側=「敵」としてISISに認識されるようなパフォーマンスを行った。

その結果、ISISは水面下で行っていた交渉をとりやめ、身代金要求額を法外なものに吊り上げ、日本政府の姿勢を試した。つまり、本当に有志国連合の一員として対峙する覚悟があるかどうかを試したのである。結果、日本政府は自国民一人を犠牲にすることで、その覚悟を示した。先進国として称賛されるべき行動ではない。

これのどこが『苦渋の選択』なのだろうか。
国民の生命・財産よりも国家のメンツという名の国益を取っただけの話ではないか。

日本政府の覚悟の拒絶に対する応答としてISISは一人目の人質、湯川遥菜さんを処刑・殺害し、交渉は次なるステージに移った。ヨルダン死刑囚との交換である。これも、土台無理な注文であった。ヨルダン側がパイロットの解放を最優先とするのに対し、ISIS側は後藤氏との交換にしか応じないというのだから。取引不成立となって当然の、無理難題な要求だった。

米CNNは、リシャウィ死刑囚の捕虜交換要求は、リシャウィが持つ「最高権力の継承」という象徴的な重要性によるものだろうと分析していたが、一理ある。ISIS側は、今回の騒動を起こすことによりリシャウィの死刑を延長させることに成功した。そしてヨルダンは今も、パイロット解放のための交換に応じると表明している。

パイロットの生存は未だ確認されていないが、ヨルダン側としてはISIS側は唯一提示した条件をなくせば、取引の材料がなくなる。完全にテロ組織に翻弄されている状態だ。もし日本の事件に巻き込まれずに単独で交渉を進めていれば、あるいはパイロット(軍人)とISISの重要人物との交換は成立していたかもしれない。その芽を潰したのは日本政府の独善的行動だ。

このように、2014年の8月から両人質に殺害が確認される2015年1月まで、安倍自公政権は決して満足な対応を行ってきたとはいえず、あまつさえ国民の命が危険に晒されている間に解散総選挙を行い、挑発行為を行い、そして交渉も妥協もせず、国民二名の死亡を招いたのである。

ハッキリ言おう。

本件、現行安倍政権の人間こそ万死に値する。

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