本稿は、6月20日付で英字誌The Diplomat公式ブログの『Tokyo Notes』に掲載された"Hatoyama's Naked Dance"という記事と、その元になった原稿を融合した“超訳”的試みです。The Diplomat掲載の原文についてはタイトルをクリックしてください。
後任の菅総理が就任してから1週間を経て、そして通常国会閉会の前日に、鳩山元総理がついに沈黙を破った。しかもテレビ放送の中ではなく、雑誌や新聞記事の中でもなく、ツイッター上で。
元総理は誰に向かって呟いていたのか。それは、全国民に対して、そして、彼のフォロワーに対しての呟きだった。ここでいうフォロワーとは、ツイッター用語でいうところの「フォロワ」ではなく、指導者に追従する支持者や賛同者のことを表す。
では、退任後の短い、でも完全な沈黙を破って彼はどのような言葉を呟いたのかというと、このようなことだった。
ここで言われる「裸踊り」とは、日本語の感覚でいえば衆人環視の中で恥をさらす愚か者のことを意味すると思われるが、鳩山元総理を何を言わんとしたのだろうか。
ツイッター用語でいうところの彼の「フォロワ」たちは困惑した。どういう意味で「裸踊り」という言葉を使ったのか、もっともらしい憶測が飛び交った。
この話題となった呟きの翌日、元総理はもう一度、YouTube動画のリンクとともに、こう呟いた。
言葉より、ハッキリとした行動(動画)で見てみよう。
動画が物語る元総理の真意
(※日本語字幕付きです)
この動画のメッセージはひじょうにわかりやすかった。鳩山元総理が、これまで伝えようとしてきたどんなことよりも、クリアに伝わった。
この動画の中で、元総理が八ヶ月という短命政権の中でひた隠しにしてきたものが、デレク・シヴァーズ(Derek Sivers)という、デジタル音楽業界に革命をもたらした一人の若い有能な実業家によって、明らかにされた。(詳細:すみっち通信)
実際、ツイッター上では数人の識者がある仮説を立てていた。それは、元総理が「愚者」を装っているという、希望的観測だった。一部の識者は、彼の見事なまでの「愚かな立ち振る舞い」には隠された意図があるとすら確信していた。
世に広めたい秀逸なアイディアばかりを集めることですっかり有名となった“TED”の短いビデオの中で、シヴァーズはでこのように述べている。
"The first follower is what transforms a 'lone nut' into a leader."
(最初のフォロワーが、一人のバカをリーダーへと変えるのです)
しかし、私自身を含む多くの人間が、これはあくまで希望的観測で、最終的に元総理は国内外の圧力に屈して、(普天間飛行場の)現行移設案を受け入れるだろうと冷めた見方をしていた。実際、そうなった。しかし、それにはちゃんと理由があったのだ。
遂にささやかれた、あの地名
鳩山前政権が実質的な終焉を迎える6月16日付けの毎日新聞の『記者の目』という記事に、当時の小沢幹事長と鳩山総理の間でささやかれた一連の言葉が詳細に綴られた。
記事によると、菅現総理が国会の州銀本会議場で首班指名を受けているその最中に、小沢幹事長は川内博史議員の肩をぽんと叩き、こう言ったという。(川内議員の党内での活躍についてはこの記事を参照)
「君、サイパンに行ったんだよなあ。今度ゆっくり話を聞かせてくれよ」
さらに記事は、当時の鳩山総理が同議員に対して言った言葉も綴る。それは、川内議員が自分の席に戻りがてら、総理に「おつかれさま」と声をかけたことへの返答の言葉だった。川内議員は毎日の取材に対し、この言葉から「自らの思いを実現できなかった無念さ」を感じ取ったと答えたという。
「やっぱり、テニアンだよね」
記事によれば、ここに込められてた「思い」とは、「対米依存の安全保障からの脱却」だったという。
この言葉を知り、望みを捨てずにいた我々は、新たな強い望みの芽生えを、その再生を感じた。この思いを確信へと変えたのが、退任したばかりの元総理のあの1回の呟きだったのだ。
米国はこの動きを十分に警戒すべきだ。
引き継がれる「対米脱却」の志
新政権は確実に、現行案に近い形で合意を「フォロースルー」する。そしてそれは間違いなく、全国民規模の反発を呼ぶだろう。それが、鳩山元総理の「裸踊り」の狙いだったからだ。
一部の報道では、「裸踊り」ツイートの目的は、『新しい公共』円卓会議が一人歩きし始めたことへの、元総理の喜びと決意を示したものだとする。だが、果たしてそれだけだろうか。「新しい公共」に向けた動きを、「裸踊り」のような「愚かな立ち振る舞い」として捉えた報道はあっただろうか?深い沈黙を破った元総理の真意は、さらに深いところにあり、2つのツイートはこれを暗喩していたのではないか。それは、普天間問題に踏み込むことを憂慮した故ではないか。そう捉えることもできる。
この捉え方に基づけば、国家安全保障上の課題が、日本全国民の利益を損なうことは、最早なくなるだろう。いまや沖縄県民が求める利益は、全国民の求める利益と同義となった。彼らが求める利益は、単純明快である。
「主権を尊重しないのならば合意は履行されない(できない)」ということだ。
これはすなわち、米側が0528合意を「フォロー・スルー」して、安全基準の改善や、環境への実体ある配慮を行わないかぎり、合意は履行されない(履行を阻止されるであろう)ことを意味する。この場合、当然、普天間飛行場は沖縄県外ならびに日本領外に移設されることとなる。米側がこれらの事項を実体ある形で遵守するには、課題山積の地位協定の改定も当然、視野に入ってくる。
話はここで終わらない。望みは生き続ける。
最後には、絶望ではなく、希望が残されたのである。
Originally written and translated by Etranger
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