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2012/02/21

普天間返還:2/20の『クローズアップ現代』音声起こしテキスト(前編)

在日米軍再編見直し ~玄葉外相に問う~(前編)




国谷キャスター
こんばんは、『クローズアップ現代』です。

日本の国土の0.6%にアメリカ軍基地の74%が集中する沖縄にとって、基地問題の象徴となっているのが、普天間基地の問題です。

普天間基地の返還が合意されたのが、1996年。日米両政府は、「普天間基地の機能を名護市辺野古に作る新しい施設に移す」としてきましたが、地元や環境団体等の反対を受け、移設計画は進んでいませんでした。

事態の打開を目指して、2006年に合意されたのが、こちらです。


  1. 名護市辺野古に代替施設を建設し、普天間基地を移設すること
  2. 8000人の海兵隊員をグアムに移転させること
  3. 嘉手納基地より南にある5つのアメリカ軍関連施設の返還
この3つを一体として進めるという「パッケージ」です。

つまり、1番目の、普天間基地が辺野古に動くということが実現しないと、他の2つも進まないという仕組みが作られたのです。

ところが、それでも事態が膠着し続けてきたことから、今月、突如として打ち出されたのが、この「パッケージ」の分離です。

海兵隊のグアム移転や、アメリカ軍関連施設の返還という、沖縄にとっての負担軽減を、普天間移設に先行して進めると発表したのです。

今夜は、この「パッケージ」の見直しに取り組んできました、玄葉外務大臣に起こし頂いています。

見直しは、沖縄、そして日本の安全保障にとって、どんな意味を持つのか、のちほどじっくりと伺って参ります。

冒頭で紹介されたときの玄葉氏の表情

対談

国谷キャスター(以下、国谷)
玄葉外務大臣(以下、玄葉)

注: 「あの…」などの間を保つ表現は取り除いてあります。


「パッケージ分離」の意味とは


国谷
ここから、玄葉外務大臣にお訊きして参ります。

突然発表されました、この「パッケージ」の見直しですけれども、アメリカが積極的に中国の台頭を受けて太平洋戦略を見直して、軍をそのトランスフォーメーションに早く乗り出したい。もう普天間の移設問題に待ってられなくなった、というのが見直しの契機だ、ということでよろしいんでしょうか。
玄葉
もちろん、新しいアメリカの国防戦略指針と関係があります。例えば、06年のロードマップが先ほどVTRで出ておりましたけれども、あれも、03年に米軍再編の問題が出てきて、グアム移転という話になってきたんです。

いまの日本の状況、アメリカの状況。お互いに、困難な問題を抱えている。VTRにもありましたけれども、米国は対議会の関係。日本は対沖縄との関係で、それぞれ問題を抱えていると。したがって、「お互いに知恵を出し合おう」と言ったのが、まさに日米外相会談だったわけです。事実上、そこからこの問題はスタートしているということです。

これは、先ほど申し上げましたけれども、当然、アメリカの国防戦略指針も関係していますし、刻々と安全保障環境が変わっております。当然、我が国の安全保障の環境も変わっておりますから、お互いにそういったことを勘案しながら、柔軟に物事を考えようと。今回は、「パッケージ」を外すということで、沖縄の負担を先行して軽減していくと、いうことを考えたわけです。
国谷
アメリカの戦略的な変化も大きかったということですけれども、一つ確認させて頂きたいのは、「パッケージ」が、その枠組みが出来て以降、普天間基地の県外移設が実現しなければ、海兵隊のグアム移転というのは実現しないということが繰り返し強調されてきました。この条件は今回の「分離」ということで、明確に条件が外された、という理解でよろしいのでしょうか。
玄葉
はい。基本的には「パッケージ」を切り離すと考えて頂いてよいと思います。これは、いわば、「てこ論」というのがあって、普天間の移設が進まなければ、グアムへの海兵隊の移転も進まないし、その結果として生じる嘉手納以南の土地の返還も進まないと。合わせて行うことで、普天間の移設も進める、ということであったわけですけれども、残念ながら、膠着状態に陥っていたわけです。それならば、やはり、できることからやっていく。沖縄の負担の先行軽減というのをやっていく、ということです。

嘉手納以南の施設の返還について


国谷
先ほどのVTRからも、沖縄の方々からは「期待しても裏切られることが大きかった」と。「だからあまり期待できない」という声もあったんですけれども、普天間基地の移設が進まなくても、グアムへの移転、そして嘉手納以南の5つの関連施設が還ってくる。しかも、普天間返還が実現しなくても、実現しなければ、実は還ってこないものもあるんではないですか?
玄葉
基本的には、還ってくると考えていただいていいと思うんです。とくに沖縄が強く要望しているのは、牧港補給地区。これは「キャンプ・キンザー」と言いまして、さらには「インダストリアル・コリドー」と、これは「キャンプ瑞慶覧」の中にあるんですけれども、国道58号線沿いなんですね。これは沖縄の振興に結びつくということで、私たちはとくにこの点に留意しながら協議をしなければいけないと思っています。

ただ、部分的に、「普天間の移設が進まないと返還しにくい」というところも、出てくる可能性はあるんです。これからの協議次第です。それは、例えば何かといいますと、「桑江タンクファーム」というのがあるんですけれども、陸軍貯油施設で、油なんかを、燃料を貯めておく所です。その「桑江タンクファーム」からは、普天間に燃料を送っているわけです。そうすると、「普天間の移設が進まないと」ということころも、全くなくはないので、ですから、部分的にそういったところが出てくる可能性はあるんです。でも、協議次第ということです。

基本的には切り離されている。ただ、グアムの移転が進んで、あるいはさらにグアム以外への海兵隊の移転が進んで、そうすると、「施設区域の統合」というものが必要になります。正確に申し上げると、例えば牧港補給地区だったら、そこには住宅とか倉庫があるわけです。そうすると、その住宅とか倉庫を、他の嘉手納以北の米軍施設に移す作業が必要なんです。それらを行って「土地の返還」ということになるものですから、できるだけ早期にそれらの土地の返還ができるように、全力を尽くしたいと考えております。
国谷
5月頃に新たなロードマップが発表されるのではないか、と見られていますけれども、具体的に、どこの施設がいつ頃還ってくるというのが分かってくるのは、どういうスケジュールで分かってきますか?
玄葉
現時点ではまだ明示的には申し上げられないんですが、これから協議の中で、できれば一定の時期を、いくつかの土地の返還について示すことができないかという思いは、私の中には・・・
国谷
 (語尾を遮る形で)たとえば、年内・・・とか?
玄葉
(苦笑して)先ほど申し上げたように、そう簡単ではなくて、つまり移転が進んで―海兵隊の移転が進んで―さらに施設区域の統合があるものですから。これまでも、返還された土地というのは、実は、時間はやっぱり若干かかるものですから。ただ、普天間の移設について、例えば、埋め立ての許可がなければダメだとか、そういう話になってくると、なかなか見通しが立ちにくいということがありましたので、そういう意味では、私は、沖縄の負担軽減という意味では、さらには、更なる日米同盟の深化という意味では、かなりの前進ではないかと思ってます。

先行移転は新たな“てこ”なのか


国谷
先行して関連施設の返還、そしてグアムへの海兵隊移転、ということが行われるということを先ほど“てこ”と仰いましたけれども、今度もそれを“てこ”に普天間移設をなんとか沖縄に認めてほしいという政府の思惑というのもあるのでしょうか?
玄葉
結局、強行できるという状況じゃないと思うんですね。また、してはいけないと思うんですね。丁寧に、沖縄の皆様に、あらゆる努力を尽くして、説明をして、理解を求めていく、ということしかないと思うんです。

主に二つありまして、一つは「地理的優位性」―これは、東アジアの潜在的紛争地域にほぼ等しく近いのが沖縄です。ですから沖縄の皆様には、日本全体の安全保障を負っている、ということなんですね。 ですから私は、一般論でいつも申し上げているのは、できるだけ全国で分かち合わきゃいけない、ということです。

もう一つは、普天間の問題というのは実は、普天間飛行場だけを移せばいいという話ではありません。海兵隊の特長として、結局、例えば沖縄の「キャンプ・ハンセン」とか、「キャンプ・シュワブ」にいる陸上戦闘部隊を、普天間のヘリ―CH-46とかCH-53とかあるんですけれども―それで運ぶ。そして、更に、補給とか整備とか、そういうことをする部隊、これ「全体」でひとつの「ユニット」となっているわけです。すると、どこかに移すということになると、「全体」で移さなきゃいけない。

ですから、どうしても、沖縄の県内の皆様にご理解を頂かないといけない。大変心苦しい話なのでありますけれども、いまそれがなくなってしまうと、やはり周辺諸国に対して誤ったメッセージを送ってしまいます。やはり、外交・安全保障を預かる立場としては、やっぱりどうしても、日本の抑止力というものは維持をしなければいけない、ということです。
「大変心苦しい話なのでありますけれども」と言いながら頭を垂れた玄葉氏
後編に続く)



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