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2012/02/22

普天間返還:在日米軍再編に関る最重要文書の扱いを取り違える外務省


「在日米軍再編」のページに表示されなくなった2010年5月の日米合意


2012年2月22日現在、
外務省の「在日米軍再編」ページ10年5月の「日米共同発表」のリンクが表示されなくなった。重要文書の筈が、なぜか。かわりに、あまり注目されなかった11年6月の「日米共同発表」は掲載されている。

なぜか、少し調べてみた。(以下、強調追加)

(実際の外務省ページでの表示)


10年5月の日米共同発表は、このように単独で探すと見つかる。だが、12年2月の「共同報道発表」はこの文書の流れを汲んでいる筈なのに、「在日米軍再編」ページに、この文書の重要関連文書としての記載がない。

「2月合意」「5月合意」「6月合意」それぞれの性質と違い


10年5月の「日米共同発表」(以下、「5月合意」12年2月の「共同報道発表」(以下、「2月合意」の違いには興味深いものがある。

 「5月合意」は、再編問題の最高協議体である2+2安全保障協議委員会による具体的な再編計画の実施内容となっている。

「2月合意」は、数日間の審議官級協議で決まった今後の方向性についての基本合意でしかない。

ところが、「2月合意」には「<仮訳>」の断りがなく、どうやら正訳とみていい。
一方、「5月合意」には「<仮訳>」としっかり銘打ってある。

「5月合意」は日米両政府の最高位の協議体による数ヶ月に及ぶ交渉の末、調印された合意である。それが仮訳扱いになっていて、しかも「在日米軍再編」の項目の下に関連文書としての記載がない。一方で、数日間の審議官のみの協議で為された合意が正訳で、「在日米軍再編」の項目の直下に記載されている。

これは何を意味するのか。

「日米安全保障」のページの「在日米軍再編」の項目を見ると、12年2月の「日米共同報道発表」(正訳)→11年6月の2+2「共同発表」(仮訳)→06年の「再編ロードマップ」(仮訳)と並んでいることがわかる。時系列順に見ても、「5月合意」の外交文書上の位置付け(再編計画の実施合意内容)からしても、おかしい。(以下、強調追加)

(実際の外務省ページでの表示)


外務省が公開している11年6月の合意(以下、「6月合意」)は、「5月合意」とは性質がまるで違うことが見比べるだけですぐにわかる。具体性がまるで違うのである。「6月合意」は、日米同盟全般に関る政策方針を示したもので、在日米軍再編や普天間移設に関る言及は一切ない。これは、文書中で「普天間」や「グアム」で検索すれば判る。

「2月合意」は、2+2合意ではないことは前述した。一方で、両国は正式に「5月合意」を破棄していない。その後、11年6月にも「6月合意」とは別に、委員会文書を発表している。これらが、「見直し」のための協議の対象である。にも関らず、外務省は「5月合意」も6月の「委員会文書」も、これを重要文書と位置づけた情報公開を行っていない。

まとめ:それぞれの文書の性質と位置づけ


上記の観察をまとめると、こうなる。

①在日米軍再編に関る文書の本来の性質と位置づけ(時系列順)

②外務省が公開するそれぞれの文書の本質と位置づけ(時系列順)
「5月合意」=非表示(※少なくとも関連政策ページにリンクなし)
「6月合意」=日米関係全般に関する2+2日米安全保障協議委員会の基本姿勢を表明する報道発表
「2月合意」=前回合意の見直しに関する審議機関協議での基本合意の報道発表(共通)
外務省の情報公開のあり方が、いかにちぐはぐであるかがわかったと思う。
深く調べない人間は、表面の情報だけでこれが全てだと判断してしまうだろう。

不思議なことに、日米安全保障協議員会の英語版ページではこの通り、ちゃんと時系列順に、2+2合意が並べられている。対外公報ページでもある英語版で、国内向けと同じ情報の取り扱いはできないわけだ。政策扉ページではない、日米安全保障協議委員会の日本語版にも、全記録の記載が当然ある。

(実際の外務省英語版ページでの表示)

U.S.-Japan Security Consultative Committee (2+2) (June 2011)

Japan-U.S. Security Consultative Committee (2+2) (May 2010)

<平成23年6月21日>

<平成22年5月28日>



そして、ここにこそ、日米両政府の本当の普天間問題に関する最新の公式協議の記録が残されている。 それが上記まとめの①で示した「6月合意」に当たる在日米軍の再編の進展に関る文書だ。この文書こそが、「5月合意」を真に継承する計画合意文書である。
本来、外務省は「在日米軍再編」に関る最重要文書としてこの文書を前面におき、共同発表のような声明の類は報道発表として別途分類しておくべきである。 現在進行中の協議によって見直されるのもこの委員会文書の内容なのであるから。
報道の内容を含め、本件に関心のある人間はそこを注視する必要がある。



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