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2012/02/05

普天間返還:「米軍グアム移転の切り離し」の本当の意味(天木直人氏のメルマガより)

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  「米軍グアム移転の切り離し」の本当の意味                                                                   
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 真部局長更迭問題ばかりに国民の注意向けられているが、その陰
で日米同盟の将来の根幹に関わる大きな動きが面化した。

 いうまでもなく玄葉外相が2月3日の夜に記者会見で発表した沖縄
海兵隊のグアム移転計画の変更である。

 この玄葉外相の記者会見は何を意味するのか。

 それを報じる各紙の記事は、それぞれ勝手な部分をつまみ食いして
書き散らかしている。

 無知なのか、意図的なのか、本質をずらしている。

 ならば、私が代わって解説して見せる。

 それがこのメルマガの目的である。

 これは単なる在沖縄海兵隊の「切り離し移転」ではない。

 2006年につくられた在日米軍再編合意の変更である。

 しかもその変更は米国に一方的に押し付けられるものだ。

 日本政府は、これまで機会あるごとに何があっても日米合意を
守ると言い続けてきた。

 米国の機嫌を損ねたくないからだ。

 それが突如として崩れた。

 肝心の米国が変えると決めたからだ。

 ただでさえそうであるのに、野田弱体内閣と田中素人防衛大臣
の下で再交渉が始まるということは悲劇だ。

 それを見事にあらわしているのが玄葉外相の記者会見における
暗い表情だ。

 弱体内閣である以前に官僚丸投げ内閣の野田政権と、真部局長
の首一つとれない田中防衛相の下では、日米再交渉はすべて官僚が
取り仕切ることになる。

 米国の要求をそのまま飲まされることになる。

 国民に正直に伝えることのできない不合理な内容となるので、
再びウソを重ねざるをえない。

 これが玄葉外相の暗い表情の原因なのである。

 何が問題か。

 米国は国防予算の強制削減と、対中国シフトで米軍の再編成を
余儀なくされた。

 それは一言でいえばアジア・太平洋諸国に対するオフショア・
バランシングという名の同盟国に対する負担押し付けである。

 在沖縄海兵隊の一部が移転する事だけを強調して、これは沖縄
負担軽減だと強弁できなくもない。

 政府やメディアはこの事だけを強調する。

 しかしその実態はその逆だ。

 沖縄の基地機能は減る事無く、日本の財政負担ばかりが増える。

 移転するのは司令部から戦闘部隊に変更されたという。

 問題を起こす戦闘部隊は日本から移動させるが米軍とその家族は
残る。

 日本の生活が快適だからだ。その経費を日本が負担してくれる
からだ。

 普天間基地の辺野古移転問題は残る。普天間代替基地は海兵隊
の基地ではないからだ。

 日米合意のウソがはっきりしということだ。

 米国にとっては普天間代替基地が建設出来なければ、当分は現状
のままでいいのだ。

 グアム移転のインフラ工事は続く。

 グアム新基地は何も沖縄の海兵隊移転のためばかりではない。
あくまでも米国の基地再編計画によってつくられるものだ。

 その経費負担を日本は負わされていたのだ。

 在沖縄海兵隊の一部が豪州やフィリピンに移されても、グアム
施設経費の分担割合はかわらないという。それを認めることは、
日本の財政肩代わりがますます鮮明になるということだ。

 極めつけは、このような途方もない不都合な交渉が、4月にも
予定されている野田首相の訪米までに決められようとしている
ことだ(2月5日毎日)。

 こんなに重要な日米同盟の根幹に関わる話を国会がまともに
機能していないドサクサにまぎれて決めてしまう。

 めちゃくちゃな話だ。

 そもそも2006年の日米合意が国民に一切説明されることなく
不透明な形でつくられた。

 それが米側の都合で再交渉せざるを得なくなった今こそ、千載
一遇のチャンスととらえ、国民の見える形で仕切りなおしすべき
なのだ。

 それが再び、以前にもまして官僚主導の不透明な合意になろうと
している。

 さすがの玄葉外相も良心の呵責に耐えかねて暗い顔をせざるを
えなかったのである。
                           了




【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】
天木直人のメールマガジン2012年2月5日第98号より(ブログ版



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