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2015/07/04

【書き起こし】7月1日平和安全特別委員会での伊勢崎賢治氏の意見陳述 Vol.1 by 田中 遊梦さん

【7月1日平和安全特別委員会での伊勢崎賢治氏の意見陳述 Vol.1】


伊勢崎賢治氏の意見陳述本当にすごかったですね!
これは戦争法案の根本的な問題点を突いた、すごい発言でした。
この言葉を聴いて戦争法案の強行採決なんか、本来なら(まともな精神なら)できる訳ありません。
映像はこのリンクでご覧ください。
映像の大まかな書き起こしをしましたが、長いので、2つに分けて投稿します。
前半はPKOの現代までの流れを説明しています。
Vol.2の方が今回の戦争法案への反対意見としての圧倒的な反論になる内容なのですが、このVol.1もその前提説明になっているので、よかったら読んでみてください。

(※以下、字を大きめにしてあります)

伊勢崎賢治氏の意見陳述 書き起こしVol.1


PKOとは国連安全理事会が承認し、国連が総合指揮を執るものです。
そもそもPKOとは、武力介入という強制措置でありながら、紛争当事者全ての合意があると云う、つまり国連憲章において第6章と第7章の中間にある第6章半と言われていました。
多くの場合、ある紛争国の政府と反政府勢力の間に内戦が起こってやがて停戦になると…その双方が中立であるPKOが割って入るという、これを認めている状態です。
ですからその時代のPKOというのは、主要任務は停戦監視が筆頭任務でした。
PKOの軍事部門である国連平和維持軍(PKF)は、自動小銃などの軽武装、そしてできる限り大所帯で行くという、これで現場を確保して停戦が破られないように抑止力として機能するという、こう云う考え方が一般的でした。
我が国のPKO参加五原則と云うのは当時のそういう前提に生まれたものだと理解しています。
PKFを軽武装で大規模にするというのは、国連はあくまでも中立性を保ちたい、もしくは国際人道法、戦争の当事者になりたくないと云う、国連の意思の表れであります。
国際人道法とは人道的な戦争を行うための「流儀」を示したものです。
つまり、攻撃して良いものといけないものを区別する、もちろん、攻撃していけないものは「一般住民」です。
こう云う戦争の人道面に関する立法化を、人類は試行錯誤して来ました。
その大元になるのが、1949年のジュネーブ諸条約です。
でもこの時でも、想定する戦争するのは「国家対国家」でした。
その後、内戦の時代を迎えます。で、国際人道法が想定する戦争の定義が拡大します。
内戦とはある一国の中だけで完結しないのです。
例えば、アフリカのそれのように、植民地時代に引かれた人工的な国境を反政府勢力が跨いで活動すると、こう云う事が一般的です。
つまり周辺国同士の政治が複雑に絡んだ構造、それが内戦です。
ですから、今日では極めて国内化したものになっています。
停戦の監視をを前提としてPKFが派遣され、もしその目の前で停戦が破られ戦争が始まってしまったらどうするか?
この場合、PKFはどうするのか?
この問題は国連の法務局と国際法研究者の中でずっと議論されて来ました。
まず、PKO(PKF含む)の要員はこれを攻撃する事は国際法下では、違法とされています。
これを「PKO要員の保護特権」と云います。
でももし、PKFが武力行使をしたら、その保護特権はどうなるのか?
「国際人道法」はご存知のように、交戦したい同士がお互いを合法的な攻撃目標とし、「人道的な戦争をする流儀」を定めたものです。
ですからその一方だけが、保護特権を持つと云う事は概念上許されません。
よってPKOが自ら武力行使をしたら、その保護特権は失われる、そして交戦相手と同等になるという考え方が定着している。
ですが利害の関係のないもめごとに首を突っ込むことですので、本来ならやる気が起きません。
しかし1994年、後にPKOの行動指針を根底から激変させる事件が起こります。
アフリカのルワンダの多数を占めるフツ族と反政府派のツチ族で内戦が行われ続け、停戦になった時PKOが発動され、PKFが派遣されました。
この時、この殺戮を首謀したのが政府側フツ族です。この時、現場のPKF司令官は住民を保護するための武力行使を進言します。
しかし、安保理はこれを却下します。同時にPKFに兵力を提供していた国々が離れてしまった…
その結果、100日間で100万人の住民が殺されてしまった。これが「ルワンダの大虐殺」です。
これを契機として「保護する責任」が生まれました。
その際には武力の行使も構わない、これは保護する責任って云う考え方で「内政府干渉の原則」とバッティングします。
一方で1999年、国連事務総長官報として全てのPKFは国際人道法の紛争の当事者になる覚悟を持てと云う宣言をします。
そしてPKFは住民の保護が主要任務になります。
今は「停戦の監視より住民の保護が優先される時代」となりました。
つまり「停戦が破れ、戦闘状態になってもPKFは撤退しません」「住民の保護の為に武力行使をします」
って云う事は「停戦が破れたら活動停止、そして撤退」という我が国のPKO五原則はここで、根本的に見直さなければなりません。
PKFの任務激変に伴い、それに兵力を提供する先進国からの派兵は激減しており、それに代わり既得利権感を持つ周辺国が有効と変わってきている。
こういう状況で日本のような先進国に何が期待されているのか?
まず資金、でもただ金を出すばかりではありません。
このようにPKF自身が好戦的になっていますので、PKF自身が国際人道法違反しないように司令部のポストを狙います。
または国連軍事監視団、これは「安保理の目」と言われてまして、PKFでさえ、その監視の対象になります。
このようにPKOの中立性が失われる中で、最後の砦が「国連軍事監視団」であり、非武装の軍人がやることが原則です。
以上、PKOを取り巻く激動する環境を説明しました。

(※後半起こしと動画はこちら

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