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2014/06/12

一輪の紫陽花の花が思い出させたこと: 紫陽花革命、再び。


紫陽花革命、再び。


「紫陽花革命はもう過去のもの」「終わっている」という人がいるが、まったく終わっていないと思う。

むしろ継続的に進化し、継続的に広がっていると思う。

その中で、「紫陽花革命」という言葉だけが価値を失ったのかもしれない。

そういう私も、こうして再び言葉を広めようとしているのだが、これはその精神がいまも受け継がれており、全国各地で運動が続いていることを示すための一種の確認作業である。

「紫陽花革命」という言葉は2012年のちょうど今頃、人知れず広まった。

誰が言い始めたのか、その明確な定義もわからないまま、「紫陽花」のイメージとアイディアだけが、ネットとリアルを紡ぎながら人々の心を駆け抜けた。

その「イメージ」が一気に広まったのは、フリージャーナリストの田中龍作さんが撮影したこの一枚の写真がきっかけだったと思う。 




一時期はアイコンにも多くの色とりどりの紫陽花の花が咲いた。

2012年6月28日には、ついに国会に巨大な紫陽花の花が現出した。


 
脱原発社会を求めて訴える数万人の人々が、このようにして国会に巨大な美しい紫陽花の花を咲かせたのだ。


その後、運動の盛り上がりとは裏腹に、時の民主党政権は国内外の原子力勢力の圧力に屈して徐々に脱原発色を薄め、即時原発ゼロを閣議決定する機運は失われた。

そして原発を推進する自公政権の復権により、脱原発の道は絶たれたかに見えた。

が、“革命”の炎は絶えていなかった。それどころか、運動はレジリエンス( しなやかさ)を発揮し、いまや全国規模で各種各様の抵抗運動が展開されるようになった。

まるで紫陽花の花のように、色とりどりの運動が今も展開され続けている。


 
こうした継続的に進化し、広がる運動は最近、一つの大きな成果を残した。大飯原発再稼働に対する、福井地裁のこの人格権の尊重を謳った判決である。


 

経済振興を優先する政府規制当局や原発立地自治体・電力会社からなる原子力村が総力を挙げて原発再稼働を推進するなかで、福井地裁の人格権判決は私たち脱・反原発派に大いなる勇気を与えてくれた。


 
福井地裁判決の他ならない最大の功労者は、その訴えを起こした人々やこれを支えてきた人々である。彼らが「しなやかさ」を発揮し、諦めず、闘いつづけたからこそ、脱・反原発派にとっての歴史的な勝利が導かれた。

紫陽花 hydrangeaは、西洋では「高慢」「冷淡」「移り気」だとか、なにかとネガティブなイメージがつきまとうらしいが、日本では古来から「仲良し」「団結」「家族」など人としての「温かみ」を表すポジティブなイメージが強い(らしい)。
  
脱原発社会を目指す全国各地の運動が「紫陽花革命」という総称を得たのも、やはり血の通った、温かみのある、普通の人たちが関わる「温かみのある運動」だからなのだろう。


他者や家族・愛する者の命を、原発事故の惨禍から、放射線被ばくの恐怖から守ることを至上命題とする全国規模のこの運動は、まさに血の通った、紫陽花のような温かみを持った運動だ。




時に、脱・反原発をよしとしない勢力との間で、熱くなりすぎて「血が滾る」ような状況に陥ることもあるが、人が作り出すムーヴメントというのは得てしてそういうものだろう。

まさに「生きもの」なのだから。


「紫陽花革命」に積極的に参加している人も、参加していない人も、一緒くたにされることに憤慨する人も、思い起こしてほしい。この紫陽花は、運動のシンボルでしかない。

名前は重要ではない。でも精神は生き続け、ますます強くなり、広がっている。

まもなく国は、私たち国民の生命と財産を守る名目で、私たちの暮らしを守ってきた平和憲法の根底を覆す決定を行う。それが、全ての政策に通ずる国の基本姿勢。

私たち脱・反原発派は、人としての温かみのないその姿勢に、しなやかに、温かみを以て抵抗し続けようではないか。

国は、「国土強靭化」と称して、自然災害や人為的な事故による被害に対する「しなやかな」対応ができる国土に改造する計画を打ち出しているが、もっとも「しなやか」なのは、私たちの心だ。

「生きたい」「生きる」「生かす」という強靭な意志が、私たちをそうさせる。

「紫陽花革命」という名前が人々の心から消えても、それが象徴することを願い、望む人々のしなやかな心は失われていない。

同じ人として、そうして頑張り続けている人たちに、エールを贈り続けたいと思う。

今朝、この一輪の未熟な紫陽花が思い出させてくれた。


2014/05/03

緊急転載:水俣病と戦ってきた現役医師が語る「科学論」――「科学とは何か?」 by 高岡滋医師 #美味しんぼ #鼻血


Facebookにて抜粋掲載した論文について、その著者本人から全文転記・共有の許諾を頂いたので以下掲載する。実際の論文(参考文献付き)はPDFで公開されており、ダウンロードが可能

日本の科学者  Vol.48 No.6 June 2013
『●特集● 原発のない社会をめざして ──九州からの発信──』より転載:

「科学」とは何か

──原発事故・放射線による健康障害を考える

高岡 滋(たかおか・しげる1961年生まれ.山口大学医学部卒業.
所属:神経内科リハビリテーション協立クリニック.
専門:神経内科学,臨床心理学.
福島第一原発事故後,本来の医学・公衆衛生学の手続きが無視されたまま,放射線の健康影響に関する議論がなされている.そこには,リスク仮説を立てること自体の拒絶,疫学軽視,予防原則の忘却等がみられる.その根底には,行政の隠蔽姿勢とともに,人体リスク解明の科学を理解しないままリスクを語る,個別科学の判断基準を口実に事実を無視・過小評価する等の,「科学者」として憂慮されるべき問題が存在する.


はじめに


通常の医学では,患者由来の情報をもとに医師によって診断・治療が自発的に進み,たとえ誤りが存在しても専門家間の論議により是正されていく.ところが,行政や企業がかかわる水俣病や原爆症などでは事情が異なる.私は,1980年代から水俣病の臨床や研究に従事してきたが,これらの分野では,行政の決めたストーリーが医学界や専門家集団を支配する実態を目撃してきた.このような状況下で,私たちは,環境汚染による健康影響リスクや因果関係を,本来の公衆衛生学的手法を用いて明らかにし,患者救済につないできた.

原発事故後,放射線の健康影響に関するさまざまな見解が述べられているが,原発政策へのその専門家の姿勢いかんにかかわらず,本来の公衆衛生学的なリスクや因果関係解明の手法に従って議論がなされているとは限らないようである.本来のリスクの考え方やリスク解明の手法,そしてリスクに対してとるべき態度について述べたい


1 環境汚染に起因する疾患への対応


環境汚染に対しては,原因の排除,汚染実態の解明,健康被害の解明と治療,住民への情報提供,適切な診断基準の制定,被害者への補償,再発防止などがなされなければならない.ところが,水俣病において,原因企業と行政は,これらのほとんどをまともに実行してこなかった.

原発事故発生時,私たちの最も重要な関心事は,上記の諸事項が,今後どの程度実行されていくか,ということにあった.まもなく明らかになったのは,行政による隠蔽政策である. SPEEDIの情報を提供しなかっただけでなく,日本の歴史上最大規模の核汚染であるにもかかわらず,被曝の最小化のための食品などの検査と情報公開が十分に行われておらず,ガレキ焼却など,放射能拡散に寄与するような政策が積極的に進められている.

文科省ライフサイエンス課と厚労省厚生科学課による 2011年 5月 16日の通達は,「重複調査を控える」よう,「関係自治体と調整する」よう,研究者に指示しており,科学に対する干渉となっている.同年,通常行われるべき患者調査が福島県内などで実施されないことも決定された.

また,同年 6月に発表された福島県民対象の健康管理調査は,調査対象の健康障害の項目や情報公開なども不十分であり,多くの問題がある.全体として,水俣病以上の無策と積極的な隠蔽が進行しているといってよい

2 毒性物質による健康影響の検討方法 -曝露(被曝)と健康影響の柱(図 1)


毒性物質による健康障害では,曝露(被曝)と人体への健康影響の両方のデータを検討していく必要がある.例えば,水俣病の原因となったメチル水銀中毒は,魚介類を介した経口摂取が曝露の原因であり,健康影響は中枢神経を中心としてみられる.

その際,曝露指標として毛髪水銀値が用いられることが多いが,原因物質不明とされた時期が長く,原因が判明してからも,行政が住民の詳細な調査を怠ってきた.しかも,頭髪は月に 1 cm伸びる.過去の曝露を証明する数値の多くは存在していないが,このような状況においても,喫食歴を曝露指標として採用することにより,被害の実態を明らかにし,個人診断も可能となった.数値をもとに検討できればより有利な面もあるが,その数値自体に技術的,社会的限界が存在しうる.限界が存在しても,その前提の元で科学的考察を行うことは必ずしも不可能ではない.



放射線被曝の場合は,曝露様態がより複雑であり,外部被曝と内部被曝が存在するし,放射性微粒子による局所高線量被曝の健康影響も考えなければならない.これらの被曝様態の差異により,健康影響の現れ方が異なる可能性は十分あり,本来外部被曝による人体影響を表現する単位としてのシーベルト( Sv)を,放射線被曝全体の指標として絶対化して用いるようなことがあってはならない.

また,被曝の健康影響側の指標としては,癌死が多く用いられているが,実際には,癌死以外に数多くの健康影響指標が存在し,癌死は健康被害の氷山の一角に過ぎない可能性が高い.そもそも,毒性物質の安全性の検討は,最も身体影響を受けやすい項目を指標に決定されるべきである.


3 低線量外部被曝による健康障害


100 mSv未満の低線量外部被曝による健康障害の科学的証拠がないという言説がまかり通り,複数の医学会もこの立場に立っているが,実際には, 100 mSv未満の低線量外部被曝による健康障害を認める研究は少なくない.

ICRP2007勧告「 A.4.1. 放射線反応に関する基礎データ」で,「しかしながら,がんリスクの推定に用いる疫学的方法は,およそ 100 mSvまでの線量範囲でのがんのリスクを直接明らかにする力を持たないという一般的な合意がある」1と記述されているが,この力(=統計学的パワー)は発生率と調査数に依存するのであり,この記載は正しくない.

古くは Stewartが,胎内被曝の研究で 250mrad2.5 mSv)まで放射線影響の直線関係が成り立つとし 2,小児期の診断用レントゲン撮影で小児白血病が増えたという研究 3や 10mGyで小児癌が増えたという報告 4など,低線量の影響を示す研究は少なくない.

原爆被爆者データでも, 100 mSv未満の低線量でも LNTを否定する根拠はなかったとされ 5, 100 mSv以上のみならず, 5mSv以上から 100 mSv未満, 5 mSv未満の群でも癌死が多く見られた 6ことなどが報告されている.これらの被爆事例では黒い雨や内部被曝の影響が関与している可能性もある.


4 内部被曝による健康障害


ICRP(国際放射線防護委員会)は外部被曝と内部被曝はその生物学的効果が同等であると主張しているが,明確な根拠はない.むしろ,放射線の集積性や,体内で発生した α線や β線のエネルギーの大半が体内の狭い範囲内で消費されることになり,臓器ごとの影響も異なることを考えれば,内部被曝に特別の注意を与える意味がある.

WBC(ホールボディーカウンター)などを用いても内部被曝量の測定や身体影響の推定が非常に困難であることに異論はない.個人個人の内部被曝量を Sv単位で精密に換算・評価していくことはほとんど不可能であり,間接的な変数や状況で評価していくことも考えなければならない.これまで,大気圏内核実験後の乳児死亡,原子力発電所周囲での小児白血病の多発などの研究がある.

内部被曝については,特に,チェルノブイリの事例が重要である.小児甲状腺癌以外にも,汚染地域での先天奇形,白血病・リンパ腫の増加,その他の非癌性疾患などが報告されている.これらが無視されているのは, IAEA(国際原子力機関)のチェルノブイリ報告は,約 350の英文文献しか参照していないことによる.

実際には,チェルノブイリ事故の影響は,英語以外のものを含めて 15万に上る文献があり,ニューヨーク科学アカデミーの『チェルノブイリ』7は,そのうち約 5000の文献を紹介している.このなかで,発癌,癌死以外に,有病率,死亡率,加齢,良性腫瘍,循環器・内分泌・呼吸器・消化器・泌尿生殖器・骨格筋肉系・神経系・皮膚の異常や,感染症,遺伝子損傷,先天奇形,幼児死亡,出生率低下,知能指数低下などが検討されている.

ウクライナ政府の報告書でも多くの健康障害が報告されており 8,ネットで参照することができる.


5 事故直後から訴えられた諸症状に関して--仮説の重要性


原発事故直後から,東日本各地で鼻出血,下痢,鉄の味などの症状が,ネット上や東日本からの避難者などから報告されてきた.医師を含む多くの専門家が,広島・長崎の経験やメカニズムを根拠として,これらが放射線影響によるものではないと言下に断言しているが,この態度は重大な問題を含んでいる.

通常,十分な症例が医師によって検討された疾患や中毒などであれば,因果関係は過去の知見によってある程度識別することが可能であるが,環境汚染物質による健康影響のように,過去の曝露事例がない,または少ない事例においては,因果関係を否定することなく,「仮説」を保持しつつ,帰納法的思考で,経過をみていかなければならない(図 2).臨床事例の検討や疫学調査などなしに,「因果関係がない」などと断定するのは,医学的にも倫理的にも間違った態度である.原因企業や行政が巨大な力で隠蔽を行う可能性のある事例ではなおさらのことである.


水俣で最初の水俣病患者が発見されたときには,メチル水銀の健康影響の全貌はわかっていなかった.政府は調査をせず,実態解明を妨害していくなかで,私たちを含む民間医師らの情報や研究の蓄積により,健康影響が徐々に明らかになってきた.環境汚染などにおいては,ほとんどの場合,同一事例が過去に存在しないことから,今後日本全域にどのような健康障害が生じてくるかについては,過去の研究を参考にしつつも,いったん,頭を白紙にもどして検討する構えが必要である.

原発事故後,日本の医学を含む専門家の多くはまったく逆方向に向かっている.日本政府の核政策に対して批判的であった研究者のなかでさえ,公然と因果関係を否定した専門家が少なくない.例えば,野口邦和氏は,「鼻血が出る,のどがいがらっぽくなる,のどが痛む,身体がだるくなるといったことは,被ばくの症状ではありません」と記述している 9

今回の原発事故でも,放射性微粒子(ホット・パーティクル)が確認されているが,一つの微粒子に 10億個もの放射性元素が存在するといわれており,これらが肺など体内に留まった時の健康影響は未知の領域である.最初に述べた鼻出血や下痢に関しては,放射性微粒子によるベータ線による局所高線量被曝によるものではないかという仮説が提出されている 10

6 公衆衛生学における因果関係の検討


それでは,放射線を含む毒性物質などの健康影響の有無の根拠は本来の公衆衛生学ではどのように検討されてきたのだろうか.現在の因果関係論やリスク論でもっとも重要視されているのは,人間のデータであり,疫学的データが多くの場合メカニズムの解明に優先して重視されている(図 3).

因果関係をめぐる考察については,まず,仮説を持つことが前提である.これは,症候とある物質との因果関係を推定することをやめたなら,その因果関係は永遠に追求されえないという単純な事実によるものである.

そして,因果関係を論じるときに,メカニズムが分かることが必要条件であると本気で考えている科学者も存在するが,一般的に疫学情報はメカニズムの解明に優先する.近年,医学分野では疫学的エビデンス(証拠)が重視されるようになってきているが,人のおかれた条件や薬剤などの介入が,実際にどのような影響を与えるのかについての疫学情報が,臨床的判断に用いられている.

これは,人体が一つの個体として成立しているということを重要な前提条件とする考え方が基本にあるからである.これらについては,津田敏秀氏が詳しく論じている 11

繰り返すが,環境の毒性物質による健康影響という因果関係をより鋭敏な領域から探っていくための最も重要な分野は疫学である.その疫学も,後追いの営みであり,予防原則が重視されなければならない.


7 科学とは何か?


今回の原発事故後,さまざまな場で「科学」という言葉が異なった意味合いで使用されている.社会・人文科学がどこまで科学でありうるのか,という議論もありうるが,ここでは主として医学を含む自然科学領域を念頭におく.

原発事故に関連して最も重要な点は,公衆衛生学や疫学の手法を科学に含めるか,という問題にある.科学を定義するとき,「数値化」「客観性」「再現可能性」「批判可能性」など,さまざまな基準や定義がありうるが,それぞれの基準には限界がある.その前に,「科学」とは「知の体系」を論理的に追求し,論理的な説明としての根拠を追求する営み 12であるということを忘れてはならない.そして,その根拠の明示ができるレベルは,その学問分野の体系や,その時代の現実の技術的能力,社会環境等によって変わってくるのである.

そのような基本的立場に立ち返って現時点での科学を捉えるならば,疫学は科学の営みである.例えば,疫学,物理学それぞれの分野での個別科学を実現する考え方や具体的行為は当然異なる.個別の厳密性や曖昧性のみを取り出して比較すれば,物理学と比較して疫学には交絡要因やバイアス(系統誤差)などの曖昧な部分がより多いといえるだろうが,それを物理学的手法やメカニズム解明によって代替することは不可能である.当然,疫学の個々の研究のなかでどれがより精密であるかという議論は存在しうるにしても,疫学という体系全体が科学の営みなのである.そのような前提が存在するからこそ,放射線以外の分野で,疫学は安全性のために,科学としても社会のなかでも適応され,有効に機能してきたのである.

内部被曝の健康影響を示すものとして, 2004年のトンデル論文がよく引き合いに出されるが,前述の如く,その他にも数多くの研究が存在する.坂東昌子氏は,トンデル論文をもとに,「確固とした証拠にできるだろうか」と述べている 13が,このような論評の仕方は疫学そのものへの理解が不足しているためであろう.疫学では因果関係は1対1という前提に立つものでもないし,交絡要因やバイアスが存在しうる前提で議論がなされ,因果関係や安全性は総括的に考察されるべきものなのである.

この点で,公衆衛生学・疫学における因果関係論における自らの誤りを,分かりやすく語っておられるのが今中哲二氏である.今中氏は,被曝データのうち,広島・長崎データとチェルノブイリ甲状腺癌を「確か」な領域,科学的推論の基盤とし,その他の疫学的知見(実際にはおびただしい数のものが存在する)を「確かかどうかはっきりしない」科学的推論の基盤とならないものとしている 14.しかしながら,放射線以外の分野では,今中氏が曖昧とするものも含めて,公衆衛生学的,疫学的知見全体を検討することによって,安全に関する政策や規則などが決定されてきたのである.

公衆衛生学・疫学を科学の範疇に含めないのであれば,人間への安全性を追求していくことはほとんど不可能であり,そのような「科学」に基づくリスク判断は「危険極まりないもの」といってよい.ただし,今中氏は,ゴフマンの翻訳やチェルノブイリなどの数多くの疫学研究を日本に紹介し,重要な役割を果たしてきていることも併記しておきたい.

8 科学と行政・政治・経済との関係


水俣病でもそうであったが,原因企業や行政は汚染や健康被害の証拠そのものを隠そうとする.したがって,科学の基礎である証拠そのものの存在を左右する政治や行政の方針に関して科学者が中立であるべきという見解は必ずしも正しくない.例えば,疫学調査のなかで,最も評価されうる手法は,居住人口全体を対象とする横断調査や前向き研究である.しかし,このような調査は行政の関与なしには困難である.おかしなもので,行政というものは,しばしば,行政にとって十分可能な調査を怠たりつつ,「因果関係が不明」というのである.

このように,科学と行政・政治は無関係ではない.公衆衛生学は,人間の健康と命を守る科学の一分野であり,一部の科学者の言説とは異なり,原発への賛否は,本来,重要な公衆衛生学的テーマでさえありうる.

水俣病では,多くの医学者・研究者が原因企業や行政に追随する姿を目撃してきたが,私はそれが一部の医学研究者のことと理解していた.ところが,原発事故後に判明したことは,放射線分野ではすでにグローバルなレベルでそのような構造が出来上がっていたということであり,事故後,日本の医師たちの多くが「迅速に」その構造に従属させられている.

ICRPのリスクの考え方は,従来の公衆衛生学の枠組みを外れたものである.従来の公衆衛生学分野のリスク研究や政策の枠組みで放射線リスクを考えるならば,原発などというものは許されざるものであったであろう.それを避けるために,公衆衛生学に縛られない「放射線防護学」が存在し,「リスク・コミュニケーション」という分野が歪められて利用されているという側面がみえてくる.

このような状況は,資本が科学の支配を免れ,さらに,科学を飲み込もうとする動きの表れでもある.もしも,これらを許すならば,これまで公衆衛生学が積み重ねてきたリスクの究明と対策の基本そのものがあらゆる分野で崩され,科学が人間を守るための役割を果たせなくなってしまうことになりかねない.

おわりに--症例蓄積と健康調査の重要性


前述のとおり,調査能力を持っているはずの行政は,環境汚染とそれによる健康障害の実態を隠蔽しようとする.したがって,行政に公正な調査をもとめつつも,民間での調査が必須である.しかし,調査の前に,日本の医師たちが,放射線障害による健康障害を念頭において国民の健康をみていくことがなければ,何も始まらない.

医学では,個別症例を詳細に精査していくなかで,仮説が洗練され,因果関係についての考察も進んでいく.また,個別の症例や環境変化も重要な情報となることがある.水俣病でネコが踊り狂った時点で汚染を疑うことができれば,さまざまな対策が可能であった.これらをふまえた医師や科学者による仮説検討と試行錯誤のなかで,国民による被曝影響に関する調査・研究が進んでいくことを展望したい.

最後に,科学者が,科学本来の意味と役割,諸科学の基盤や枠組みを自覚しなければ,科学者の自称する「科学的」行為が,進んで人倫に反する役割を積極的に推進する結果となりうるということを述べて終わりとする.

引用文献
  1. ICRP 『国際放射線防護委員会の2007年勧告( Pub. 103)』 (日本アイソトープ協会, 2009)p.131.
  2. ジョン・W・ゴフマン『新装版人間と放射線』(伊藤秋 好他訳, 明石書店, 2011)p.333.
  3. Bartley, K., Diagnostic X-rays and risk of childhood leukaemia. International Journal of Epidemiology 39, 1628–1637(2010).
  4. Doll, R., Risk of childhood cancer from fetal irradiation. The British Journal of Radiation 70, 130-139(1997).
  5. Pierce, D.A., Preston, D.L.: Radiation-related cancer risks at low doses among atomic bomb survivors. Radiation Research 154, 178-186(2000).
  6. Watanabe T. et al.: Hiroshima survivors exposed to very low doses of A-bomb primary radiation showed a high risk for cancers. Environ. Health Prev. Med. 13, 264-2702008).
  7. Yablokov A.V. et al.: Chernobyl Consequences of the Catastrophe for People and the Environment.(The New York Academy of Sciences , 2009).『調査報告チェルノ ブイリ被害の全貌』(星川淳監訳, 岩波書店, 2013).
  8. Ministry of Ukraine of Emergencies: Twenty-five Years after Chornobyl Accident: Safety for the Future.(2011).
  9. 野口邦和『放射能からママと子どもを守る本』(法研, 2011)pp.102-103. 
  10. 郷地秀夫「福島原発事故を経て,今,臨床医に求められるもの」『月間保団連』No.1084, 16-21(2012). 
  11. 津田敏秀『医学と仮説』(岩波書店, 2011). 
  12. 長岡亮介『科学の思想と論理』(放送大学, 2001)p.22. 
  13. 坂東昌子「分野を越えた 21世紀型学問の構築」『日本の科学者』47(3),48-51(2012). 
  14. 今中哲二『低線量被曝リスク評価に関する話題紹介と問題整理』第 99回原子力安全問題ゼミ(2004年12月).

付録:高岡医師執筆のその他関連論文



2013/11/21

Fuel removal of Fukushima Reactor 4 commences: decommissioning of the crippled nuclear power plant enters a new stage | Kahoku Shimpo

Fuel removal of Fukushima Reactor 4 commences: decommissioning of the crippled nuclear power plant enters a new stage

核燃料取り出し開始 廃炉作業、新段階 福島4号機


November 19, 2013
Originally posted by Kahoku Shimpo

Reactor 4 SFP (Spent Fuel Pool) slated for removal operation
Source: TEPCO (8 Nov 2013) *Japanese

*Click the image to enlarge

According to Kahoku Shimpo, as part of a cleanup process of the crippled Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant, its operator Tokyo Electric Power Co. (TEPCO) has commenced its operation of removing the nuclear fuels from Reactor No. 4 this Monday. The removal of spent fuels from the crippled reactors "will mark the beginning of a new stage of the plant's decommissioning process that is estimated to take at least four decades," Miyagi Prefecture's local newspaper reported.

Underwater fuel removal process
Source: Fukushima Daiichi Nuclear Power Station Fuel Removal from Reactor 4 Spent Fuel Pool (Nov 2013)


According to the report, the removal of the first fuel assembly started at 3:18 p.m. of the same day. The operators manipulated the "fuel handling machine" and lifted the 4.5-meter-long "fuel assembly", in a pace of one centimeter per second, and then transferred it onto a 5.5-meter cask--a steel-made transfer chamber that weighs 90 tons if willed to maximum capacity--in the the water. The operation was repeated for 40 minutes per unit, completing the loading of four units by 6:45 p.m. to end the operation for the day.




Kahoku reports that the task of loading the cask with 22 fuel assemblies is to be completed by Tuesday afternoon (November 19). The loaded cask itself will then be lifted by a large crane and transported to a common storage pool about 100 meters away. 

Source: Fukushima Daiichi Nuclear Power Station Fuel Removal from Reactor 4 Spent Fuel Pool (Nov 2013)

The spent fuel pool or SPF still contains the remains of small debris from the blast that destroyed the main reactor building. The assemblies may contact these debris upon their removal. But according to Kahoku, TEPCO says, "We will put safety at the top while proceeding with our operations."

The SPF stores 1,533 units of fuel assemblies, of which 202 are new fuels that are relatively easy to remove. TEPCO plans to remove them first. The remaining 1,331 units that contain highly irradiated spent fuel will all be removed and transferred to the common storage pool by the end of 2014.

Source: Fukushima Daiichi Nuclear Power Station Fuel Removal from Reactor 4 Spent Fuel Pool (Nov 2013)
The SPF of Reactor 4 contains three units of damaged fuel assemblies that are deemed difficult to remove. TEPCO is considering to build a new transport chamber to address this problem.

At the time of the earthquake that crippled the plant two-and-a-half years ago, Reactor 4 was going through a regular inspection and all of its fuels within the reactor core were transferred to the neighboring spent fuel pool, thus managing to avoid core melt down. However, if the water in the SPF is depleted, a massive amount of highly irradiated substances could leak out. The international community has been imploring TEPCO to address the problem and secure a safe storage of the spent fuels.

The removal of the fuels from Reactors 1-3 is to commence after 2015, but the recent revelation of the fact that 70 out of 292 units of fuel assemblies stored in Reactor 1 are damaged is raising concerns of its impact to the entire removal schedule. (related story)

Source: Safety Measures etc. concerning Fuel Removal from Unit 4 in Fukushima Daiichi NPS (5 Nov 2013)

Kahoku's Editorial Comment: 

The excuse of "unexpected events" is no longer acceptable

As the operation of removing the spent fuel from Reactor 4 commences, TEPCO is seeing this as a rare opportunity to demonstrate that everything is proceeding as planned in the decommissioning process of the crippled Fukushima Daiichi Power Plant, as they have been under a strong criticism in the way it has dealt with problems like contaminated radioactive water leakage and 'unexpected' blackouts, having the tendency to "approach issues with an optimistic outlook." Hence, TEPCO has placed the removal operation as one of its chief goals for the time being.

One of the major concerns over the removal operation is the possibility that the fuel cask may fall. If it falls from five stories above the reactor building, it could damage the fuel assemblies. If the cast breaks, a highly irradiated substances may be dispersed into the air, causing a severe problem.

TEPCO claims that they have prepared for everything that they can expect. They say they have prepared not only for the falling of the cask but for each cases, for example on emergency cooling of the SPF, leakage of the water in the SPF, earthquakes, fires, and even accidents caused by the transport trailers. So they have prepared a case-by-base scenario, but what if they happen simultaneously all at once in multiple instances? TEPCO assumes, "Such a thing will never happen."

In normal operation, the cranes transferring the fuel assemblies operate automatically. However, in this operation, it is done manually by the operator. The operator will wear a full-sized mask that may narrow the field of vision. There is no guarantee that there will be no human error caused due to difference in the operational environment.

The disaster that crippled the site two years and eight months ago occurred in multitude of instances. TEPCO must be vigilant on their plans that extend to the end of next year to ensure that their plans are fool-proof. We can no longer afford to accept the excuses of "unexpected events" any more.



Translation and additional reference by: 

A quarter of all nuclear fuel assemblies in Fukushima's Reactor 1 damaged before the earthquake, says TEPCO | Kahoku Shimpo

A quarter of all nuclear fuel assemblies in Fukushima's Reactor 1 damaged before the earthquake, says TEPCO

福島第1原発1号機 燃料震災前破損70体 全体の4分の1


November 16, 2013
Originally posted by Kahoku Shimpo

Reactor 4 SFP (Spent Fuel Pool) slated for removal operation
Source: TEPCO (8 Nov 2013) *Japanese

*Click the image to enlarge

According to Kahoku Shimpo, 70 of the fuel assemblies in the spent fuel pool (SPF) of Reactor 1 of the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant, which accounts to a quarter of total of 292 of them stored within the SPF, was damaged before the Great East Japan Earthquake hit the area on 11 March 2011 crippling the facility, its operator Tokyo Electric Power Company (TEPCO) revealed on Friday. This has raised concerns of the planned removal of fuel and decommissioning operation of the same reactor scheduled to begin as early as 2017, as technologies to remove a damaged fuel assembly have yet to be established, reports the local newspaper.

 (Official video presentation by TEPCO on the removal operation)


Until Friday, TEPCO has never revealed the details on the matter. But as they explained they insisted that they have "always informed the government." According to them, the 70 fuel assemblies in question were removed from the reactor and stored in a different location within the SPF due to "leakage of radioactive substances out of small holes found in them," creating recurring problems. 

The fuel removal scheduled to begin on Monday for Reactor 4 has also suffered a setback, as there are at least three fuel assemblies that are also damaged and the company has determined that it would be too difficult to perform and has set them aside for future operations. (related story)

Aside from Reactors 1 and 4, Reactor 2 has three, and Reactor 3 has four assemblies that are also damaged, making the total number of damaged assemblies to 80. TEPCO is considering the option of building a new dedicated transport vessel to address the issue.

Source: Safety Measures etc. concerning Fuel Removal from Unit 4 in Fukushima Daiichi NPS (5 Nov 2013)

On the reason why so many of the damaged assemblies are concentrated in Reactor 1, TEPCO explained, 


"Reactor 1 is our oldest power station and we have heard reports that the quality control of the fuel rods during their production was poor and the product quality was also inferior. Rods for Reactor 2 and beyond have been refined and their quality have improved."

Reactor 1 was TEPCO's first nuclear power plant to start its operation in March 1971.



Translation and additional reference by: 

2013/10/18

グリーンピース・ジャパンが汚染水問題について日本の国際責任を問うペーパーを発表 (Green Peace Japan releases a paper on Japan's international responsibility on the leakage of Fukushima's radiated water)

-- JAPANESE --

2013年10月17日,グリーンピース・ジャパンがロンドン条約締約国会議に合わせて,日本の国際責任をロンドン条約や国連海洋法条約(UNCLOS)の観点から問うブリーフィング・ペーパー『東京電力福島第一原発からの海洋への放射能汚染水流出——日本の国際的責任を考える』を発表した。


1年先行してこの可能性を検証していた私としては今更感が強いが,やはり個人が検証したものとは質が違う。この結論には,国際環境団体としての深い見識が感じられる。


【結論】
海洋では、環境への影響は予想が難しく、それを実証するのはさらに難しい。そのため、廃棄物の投棄から海洋環境を守ることを目的とする規制アプローチは、本来予防的でなければならない。そのため、廃棄物投棄による環境への悪影響が実証されるのを待たずとも、予防的に厳しいルールを設けている。不幸なことに、世界の大部分において陸上起因の汚染源については、予防的アプローチがとられてこなかった。

福島第一原発に貯蔵されている放射性廃棄物においては、大変寿命が長い放射性核種もあり、遠くまで広範囲にわたって海洋環境に拡散する恐れがある。海洋生物に直ちに悪影響を与えるとは考えられていないレベルであっても、濃縮作用により食品の安全基準を上回ったり漁場の閉鎖という事態に至るかもしれない。

韓国や中国、アメリカなどの環太平洋地域の国々が福島第一原発の汚染水問題にあらためて注目しているのはこうした観点からの懸念だと考えられる。

高濃度の放射能汚染水が海洋環境に流出することを止めることができないという事態は、海洋環境の保護を役割とする複数の国際協定や条約の精神に明らかに反している。事態の早期解決に向けて、日本の国際的責任が問われている。

ソース:プレスリリース:グリーンピース、ロンドン条約締約国会議で、汚染水問題に国際協力を呼び掛け 「STOP汚染水の海洋放出」署名11,393筆も安倍首相宛てに提出 | 国際環境NGOグリーンピース(プレスリリース - 2013-10-18)

(書き起こし)2012.3.3 「子どもたちが心配」と語る広瀬隆さん via Yonaoshi 3.11



2013年10月16日付のENENEWSの記事に,この1年以上前の動画が掲載された。というのも,当の動画をUPした『Yonaoshi 3.11~霧の向こう~』というプロジェクトが最近になって(といっても,2013年3月8日付けだが)ホームページにあった動画をUPしたからだ。広瀬隆さんの動画はネット上に溢れているが,こうした正式に取材に応えるものは少ないと思い,プロジェクトに許可を貰って字幕を書き出した。

2012年3月3日に行われたこの取材で語られた言葉,その時の現状,いまもほとんど変わっていない。この時に語られた約5分間の広瀬さんの短い言葉を活字として残すために,以下書き起こしを転載することにした。「このままでは子どもたちに大変なことが起こる」――そう1年以上前に言った広瀬さんの言葉は,徐々に現実味を帯びてきている。





『“正しい恐怖心”を忘れてしまう人の心』



事故があって
しばらくは ですね

やっぱり皆 ショックを受けて

それで どんどん皆 恐怖心

正しい意味での恐怖心を
皆 持つようになったのでね

そのこと自体はひじょうに
いいことなんです


“もうこれは信用できない”
ということは わかって


だけれど 人間というのは
毎日毎日 色んなニュースに
晒されているから

一番大変な出来事を
どんどん忘れていくでしょ?


今 そういう状態にはあるんですよ



『報道しないマスメディアが一番悪い』


今も 福島の原子炉の下へ
どんどん どんどん 漏れている訳ですよ


それは地下水に入っている
それから海に入っている
それから空に

どんどん出ている訳ですよ

そういうことみんな
ニュースにならないから
皆 
忘れていく訳ですよ


ニュースで毎日流せば
毎日わかりますよ


日本人そんなに
気が付かないって筈ないけれど



ニュースにならないでしょ?
他のことばっかりやってるから



だから一番悪いのは 私は
マスメディアだと思います


こういう状態をね 作り出してきてるのは
基本的には 事故前とおんなじですよね

マスメディアがこういう問題を
真剣に取り上げないで

事故が起こり起こってもなおかつ
どんどん どんどん


まあ 最初だけは
報道したけれど



ほとんど今 断片的にしか
報道しないですからね


『ガイガーカウンターで汚染は量れない』


汚染の問題はね
contaminationの問題は

要するに“測定”するしかないんですよ
ものを 土を soilですよね

皆 こうやってカウンターを
沢山の人が持つようになったんですね
ガイガーカウンターを

だけど それは“空間線量”であって
外をこう飛んでいるものしか
量らない訳です

γガンマ線しか量らない



『放射性物質は全てガス化していた』


実際にはですね

原子炉の中は 色々なものが
どこまで飛んで行ったかっていうのが

日本で報道されているもので
調べていくと 
原子炉の中はもう
5000度近くなってたんです

5000℃ですよ

だからね とてつもない
高温度になっていたので
ウランもプルトニウムも もう
大量に “ガス化”してたんです


ガスで出たんですよ

で そういうことが 私の計算で
想像できますので

で そういうのは カウンターに
全部出ないんです

αアルファ線とか
βベータ線とか
そういうものは



『誰も量っていない恐ろしいストロンチウム』


だから ストロンチウムも
誰も量っていないんです

だから 
ストロンチウムが
一番怖いんですよね

ていうのは 骨に入るから

それで 白血病ね
leukemiaを起こすから

だから 固定されるものをね

子どもたちが 今 どんどん
こう体 大きくなる子どもたちが

どんどん取り込んでますよ



『避難するために,東電に賠償責任を』


福島のような汚染地帯の人は
もう 
子どもがいる人はもう
すぐに 逃げるように

evacuationをやるように
説得してるところです

けれど 
お金が無いと
逃げられませんよね 人間は


だから 福島の人たちで
逃げたいって思ってる人たちでも

経済的な問題があるので
なかなか逃げられない訳です

それで 
だからそれには もう一つ我々が
やらなければいけないことがあって


それは この事故を起こした
東京電力という会社に きちっと
賠償させることが必要なんですよ
要するに 金を出させるのね

もう 全て出させて
経済的に逃げられる人は
全部逃がす というね ことをやんなきゃいけない



『集団疎開をさせない国は“人殺し国家』


それから まず国は 
子どもたちを
福島県内から全部 集団でね

逃がさなきゃいけないですよ

そんな 個人的にそれぞれが
逃げるんじゃなくて

子どもたちは こう
学校で一緒に生活してた
友だちと
一緒にいたい訳ですから
こう集団でね 逃げるような
そういうことをやるべきで

で そういうことは “出来る”んですよ

日本が戦争に負ける前も
おんなじようにやったの

集団疎開といって
子どもたちを危ない所からね
皆 
山やなんかに 逃がしてたりしてたんです

日本が負ける前ね
で そういうことは
今 やるべきなんです


それを何もやっていないんです 
国はね

だから私は “人殺し国家”って
呼んでいるんです この国はね


2013/09/20

《コラム》2013/9/19付R25石田衣良コラム「光り輝く2週間」への失望と怒りの檄


全文転記


今朝早く2020年の東京オリンピック開催が決定した。ぼくは暗いうちにベッドのなか、スマホで確認したのだけれど、どにかくうれしかった。久々の爽快感。ガッツポーズの5分後には、また眠ってしまったけれど。

ぼくも東京オリンピックの記憶はごくわずかしかない。あれは4歳のころ、まだ白黒だったテレビで眺めた開会式とマラソンの映像がかすかに残っているだけだ。ただ大人たちが「オリンピックはすごい」「これで日本も世界の一流国の仲間いりだ」と興奮していたのを、不思議な気分できいていた。幼稚園児だったので、駆けっこの大会を東京で開いたからといって、なぜ一流国なのか意味がぜんぜんわからなかった。

夏季冬季をあわせて、これまでもっともたくさんオリンピック開いたのはアメリカの8回、ついでフランスの5回である。今回の決定で日本も4回目で、単独第3位になる。4位グループにはイギリス、ドイツ、イタリア、カナダがいるのだから、一流国というのも間違いではない。今回、選考にもれたトルコはイスラム圏初をアピールポイントにしていた(次回はぜひ、がんばってもらいたい!東京開催が決定したあとのトルコの人たちの祝福の言葉は実にあたたかかった)。未開催なのはなにもイスラム圏だけではない。アフリカ大陸にオリンピックがいったことはないし、次回のリオ・デ・ジャネイロ大会まで南米大陸で開催されたこともないのだ。アスリートの祭典は、まだ先進国主導なのである。

最終プレゼンはぼくもリアルタイムで観たけれど、限界までジェスチャーを豊かにした英語のプレゼンテーションには素直に頭がさがった。いや、日本人にあれは厳しいよなあ。ぼくにはとてもできない。でも、はずかしいなんていってられないし、勝たなければこれまでの活動は水の泡だ。なにより日本中の期待を背負っている。プレッシャーは半端ではなかったことだろう。ご苦労さま。

ことによかったのが、パラリンピック女子陸上の佐藤真海選手だった。骨肉腫で右ひざから下を失い、日本代表選手になったのち、故郷の気仙沼が東日本大震災に遭う。家族の安否は6日間わからなかったという。再度の衝撃から立ち直れたのは、スポーツの力があったからだと訴える笑顔は、どの国の委員の胸にも響いたはずだ。

安倍首相のプレゼンも見事。ぼくもこの春、フランスにいったからわかるのだが、海外のジャーナリストがインタビューの最初に質問するのは、必ずといっていいほどFUKUSHIMAである。半年まえはまだ汚染水はこれほど話題になっていなかった。それでも相手を納得させるのは、たいそう困難だった覚えがある。

これで福島第一原発の問題を終息させるのが国際公約になった。けれど、ぼくは本心ではあまり心配していないのだ。政府や東京電力を信用しているのではない。きっちりと期日を定め、計画を完遂する日本人の生真面目さを信じている。みんなでフクシマをなんとかしよう。もう他人事ではないし、世界中が注目している。東京オリンピックを成功させるためには、早々に片付けなければならない仕事だ。

さて7年後、きみはいくつになっているだろうか。まだ同じ会社や同じ部署にいるか。すこしは昇進して、給料もあがっているか。人脈も増えて、仕事の肝をつかんでいるか。若いきみがこれから身につけるスキルは、きっと生涯役に立つはずだ。変化はなにも仕事だけではない。プライベートはどうなるか。今つきあっている相手と別れているか、結婚しているか。もしかしたら、子どももいるかもしれない。それもひとりではなく、複数の可能性もある。

未来がどうであれ、7年後の夏には光り輝くような2週間のお祭りが待っている。その日をたのしみに今日を生きよう。



以上、9/19付R25石田衣良のコラム
『光り輝く2週間』の連ツイはこちらで読めます。

あとがき


石田さんらしい、やわらかい調子の温かみ溢れる、よいコラムだった。あまりに温かすぎる=ほんわかしている=現実を無視し過ぎているという点を除いては、日本人として東京オリンピックの開催日を誕生日に持つ者として、共感できることが多々あった。

だが、失望は隠せない。

私は日本人の良いところばかりを信じて、ただよい結果が得られるという楽観的な観測はもう抱けない。日本人が「きっちり期日を定め」「計画を完遂する」生真面目さを持っている一方で、その「計画の完遂」という大義のために何が失われてきたか。ちょうど今日の日経が、そのことを記事に書いていた

日経が取り上げたのは、私の考える「本質的に失われたもの」とは違う。これが、所詮経済誌の視点ということだ。石田氏はコラムで幼少の頃「日本が世界一流国の仲間いり」を果たしたと湧く周りの大人を不思議に思ったと書いてる。

私は今も不思議に思う。

先進国入りも果たし、経済大国となり、軍事大国となった今も、「こんなに湧く」国民性は一体何なんだろう。しかも、それが何も大きな問題に直面していない普通の状態でならまだわかるが、未だ国難といえる状況にいる只中で。

2008年、約50年前に幼少だった石田少年が経験したであろう熱気に包まれた新興国があった。アジアでの20年降りの開催、そして初の開催国となった中国だ。奇しくもコラムにあったように日本は4回目の開催だ。何をそんなに浮かれることがある?

日本は未だ国難の只中にある。その中で、歴代政府は多くの国民や世界の人々が危惧するような危機感を共有せず、知り得た情報を開示せず、都合の悪い事実は隠蔽し、現在の危機を現出させた。最大の責任は民間企業である東電にあるがその監督責任は免れない。

オリンピックを成功させるために「みんなでフクシマをなんとかしよう?」反吐が出る。“みんな”とは誰のことだ。一体誰が「なんとかする」実務に携わるのだ。一体誰がその直接的影響を受けるのだ。250キロ離れた東京の人々か。それとも被災者たちか。

これまで2年間。いや半世紀以上、「臭い物に蓋をしてきた」日本人が“みんな”で共有する「フクシマをなんとかしよう」という共通目標のために、一体何をすることが想定できるのか。政府・規制当局・自治体・企業・市民ぐるみの隠蔽ではないか。

08年の北京オリンピックの時に、中国の“一流国の仲間入り”を素直に歓迎できない輩がやたらと、中国の「ハリボテ・オリンピック」を揶揄したことはまだ記憶に新しい。あれもいってみれば中国流の「臭い物に蓋」をするやり方だ。だが「オリンピック成功」という大義を持った日本人は、同じ事をしないと言い切れるのだろうか。20年の開催を前に、同じような「ハリボテ」の見せかけの体裁作りが為されると危惧するのは、杞憂だろうか。もっとも、日本の場合のハリボテは物理的なものではないが。

7年後の日本の「ハリボテ」は、もっと醜悪なものとなるだろう。被災者を福島に封じ込め、放射能汚染水の脅威も福島に封じ込め、福島には原子力災害対策の国際的な研究支援センターなるものを作り、精神的なハリボテで世界を欺こうとするだろう。

実際、私たちは石田氏が「見事」と絶賛するそのプレゼンの中で、その片鱗をまざまざを見せつけられた。政府は幾らでもウソをつくつもりだ。それが「日本人の名誉である」かのように、同調圧力により、五輪開催に非協力的な情報を封じるかのように。

いま五輪開催を歓迎し、「その為に」“フクシマをなんとかしよう”と宣う人間は偽善者以外の何者でもない。五輪の為に福島をなんとかするべきなのか。その為の国際公約であり、その公約がなければ政府や国民は動かないということなのか。

嘆かわしい。

百歩譲って、では五輪のために福島が”なんとかなる”としよう。それが散々揶揄された中国の「ハリボテ五輪」とどう異なるというのか。新興国として初開催に漕ぎ着けた国と、我が国の精神レベルは同レベルなのか。まずはそれを恥じることから始めよう。

東京五輪があってもなくても、日本は世界に対して「フクシマをなんとかする」責任を負っている。その為にしなければならないことも、その重要性も、五輪の開催如何に関わらず変わらない。そうでなくては、日本は真摯にこの問題に初めから向き合っていたことの証明にはならない。

「早々に片付ける」?

そんなこと2年前から日本全体が一丸となって考えるべきことだっただろう。実際、一部の人は行動を起こした。決して多くはない一部の人々は、政府に訴えた。法的行動にも訴えた。ボランティア活動を行った。ネットワークを作った。仕事や家事を投げ打った人もいた。それをすべて、せせ笑いながら傍観していた者たちが今更何を言う。

偽善者らめが。

いま「福島をなんとかしよう」と堂々と発言することができるのは、2年半前から実際に「なんとかしよう」と動き続けてきた人間だけだ。後出しで「東京五輪を成功させるために」「早々に片付ける」なんていう精神で今更問題に関わろうとするなど片腹痛い。今更のように「国際公約だから」「後7年しかないから」という姿勢で、政府や東電に福島の問題に取り組むことを求める人間には口を噤んで貰いたい。

というより、恥を知れと言いたい。

その人間の一人に好きな作家の石田衣良が加わったことを残念に思う。

ひとつだけハッキリしたのは、東京オリンピックの開催が決定したことで、私は石田衣良とは正反対に、7年後生きていたくないという思いを一番強くしたことだ。だから「2週間のお祭りをたのしみに今日を生きる」ことはしない。そう生きられる人は、ある意味うらやましいが、そうなりたいとは思わない。