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2013/07/23

《和訳》2013.7.22ジャパンタイムズ社説『全面支持の獲得には至らなかった参院選』

全面支持の獲得には至らなかった参院選


2013年7月22日
日曜日に投開票された参議院議員選挙で、自由民主党と公明党の連立与党は大勝し、議席の過半数以上を占めた。これにより、ついに「ねじれ」が解消される運びとなった。
だが両党は、52.61%という、2010年の参院選挙よりも低い投票率と、多くの野党が乱立することにより票が割れたという事実が勝利を助けたのであり、国民が与党に白紙委任状を渡した訳ではないことを肝に銘じるべきだ。
低い投票率は国民の政治への失望を示している。また、原発や憲法改正という選挙の重要な争点に関する国民の意識と自民党のそれとに大きな乖離があることを示している。国民は、安倍政権の自分たちの政策が福祉や生活の向上に結びつくのか注視する必要がある。
開票日当日、選挙の結果について安倍晋三首相は、安定した政治環境の中で経済政策を推進してほしいという国民の願いの表れだと述べた。しかし安倍氏は、政権が推進する原発の再稼働について大多数の国民が反対していることを示す世論調査結果にも目を向けるべきだ。
自民党は、原発ゼロを政策としない唯一の政党だ。
世論調査はまた、憲法第96条や、戦争放棄を謳う第9条の改正についても、改正に反対する国民が、改正に賛成する国民よりも多いことを示している。
選挙中、自民党、日本維新の会、及びみんなの党は、最高法規を改正するための発議が、現行の「各議院の総議員の三分の二以上の賛成」から「両議院のそれぞれの総議員の過半数の賛成」により可能となるよう憲法第96条の改正を訴えた。 
憲法の不用意な改正を防止する目的で構築された仕組みである第96条の規定を弱めるのは、危険な動きであるといわざるをえない。なぜなら、主権在民や、平和主義、思想の自由、思想の自由、言論、表現、集会、そして結社の自由などの憲法の根本理念を弱めたり、一掃することを容易にしてしまうからだ。
選挙中、安倍氏は憲法改正や原発政策、そして環太平洋経済連携協定(TPP)については、重大な争点であるにもかかかわらずほとんど言及しなかった。かわりに安倍氏が専念したのは、日銀の異次元緩和により生じた円安や株価の上昇をもたらした経済政策を売り込むことだった。しかし、その経済政策にも落とし穴があることを国民は知っておくべきだろう。
高い株価は一般市民の利益にはならない。円安により価格が上昇した輸入品目は、一般市民の生活に影響を及ぼし始めている。日銀の政策は、賃金の上昇を伴わないインフレを呼び込んだり、バブル経済を発生させる可能性がある。適切な出口戦略を構築しなければ、日銀は日本の金融政策に対する不信を招くことで、政府国債価格の急落や金利の急上昇を招き、日本経済に大打撃を与える可能性がある。
生活保護受給者の受給額を下げたことから、安倍政権は、社会的弱者を軽視する傾向があるともいえる。労働市場における規制緩和政策も、労働者の立場を弱めることに終わりかねない。
今回の参院選で、自民、維新とみんなは、参議院の全242議席のうちその3分の2以上を獲得するには至らなかった。したがってこれら三党は、衆議院では議席の3分の2以上を占めてはいてても、憲法改正を発議することはできなくなった。
今回改選となった121議席のうち、これら三党は81議席を確保。すなわち、3分の2議席しか確保できなかった。安倍氏は今後も憲法改正を目指すであろう。国民はこれを注視する必要がある。憲法第96条の緩和に慎重な公明党の存在が尚重要な意味を持つことになる。
自民党が2001年の小泉政権時代に達成した64議席を1議席上回る記録的な65議席を確保した一方で、民主党は全121議席の中の改選44議席のうち17議席しか確保できず、党史上最低の議席数に陥るという大敗を喫した。
民主党が勢力を再構築するには、一般市民や労働者の生活を安定・向上させる手厚い政策を掲げる必要がある。同党は憲法第96条の緩和には反対しているが、他の改正事項については党内で意見が割れている。この党内の分裂を乗り越えなければならない。
共産党が東京(12年ぶり)、大阪、京都(いずれも15年ぶり)の選挙区でそれぞれ1議席ずつを確保した事実は象徴的である。これらの選挙区で、民主党は一議席も確保していないからだ。すなわち、従来の民主党支持者が、安倍政権の政策を強硬的に批判し、96条の改正に反対し、TPPへの参加に反対し、また原発再稼働にも反対する共産党に票を鞍替えしたということである。民主党はこれらの選挙区での敗因から教訓を学ばなければならない。
東京選挙区では、原発廃止を訴える無所属の山本太郎氏が議席を獲得した。これは国民の原発再稼働に対する反対が根強いことを示している。また沖縄選挙区では、在沖縄米海兵隊普天間基地の県外移転を訴える糸数慶子氏が地元の政党である沖縄社会大衆党から立候補して議席を獲得した。
これらの事実は、安倍氏の政策が全面的な支持を得ている訳ではないことを指し示している。安倍政権がこれ以上暴走しないよう、反対勢力は統一戦線を張るべきである。



元記事: EDITORIALS: Short of wholehearted support,
OPINION, The Japan Times, 22 July 2013.


翻訳: Office BALÉS NEWS 

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